"「他人の姉に使う金はない」夫と800万円の新居" 第6話
夫の声には、わずかな焦りが混じっていた。
私はお皿に料理を盛り付けながら、振り返らずに答えた。
「ええ、鳴っていましたよ」
お皿をテーブルに置く。
「田課からメッセージが届いていたみたいです」
私のその言葉を聞いた瞬、夫は目に見えてほっと息を吐いた。
「あ、課か」
夫はタオルを首にかけた。
「の会議の件だろうな」
彼は得げに笑った。
「仕事な司を持つと部は苦労するよ」
私は静かに振り返り、夫の顔を見つめた。
「変ですね。残業のも司からの連絡だなんて」
私は軽く会釈をした。
「お疲れ様です」
私がわざと労いの言葉をかけると、夫はさらに調子に乗った。
「まあな。俺が稼がないとこのは回らないからな」
夫は胸を張った。
「おもしは謝しろよ」
夫はスマートフォンをポケットにしまい、卓の子にどっかりと座った。
目のの男がこれほどまでに滑稽に見えたことはない。
夫は自分が完璧に嘘を突き通せていると完全に信じきっている。
私が何もらない、従順でバカな妻だと見しているのだ。
けれど、嘘の糸はすでに綻び始めている。
その夜、夫が寝息をかき始めただった。
私は暗いリビングに1残り、ノートにこれまでの事実をきしていた。
500万円の引きし。
義母への毎5万円の仕送り。
マンションのパンフレットと夫のメモき。
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座のフレンチレストランのレシート。
そして田課という偽名を使った彩佳からのメッセージ。
点と点だった違が、確な1つの線として繋がり始めている。
しかし、まだ決定にりないものがあった。
あの消えた500万円が今どこにあるのかという、確実な証拠だ。
夫が産会社に振り込んだ記録だけでは、まだ言い逃れされる能性がある。
私はノートを閉じ、ある決を固めた。
、夫が会社にった、私は1枚の通帳と印鑑を持ってある所へ向かうことにした。
そこで、夫が隠している本当の真実の扉を、私自のでけるのだ。
翌朝、夫は鏡ので入にネクタイの結び目を直していた。
「ってくる」
夫は嫌な声をした。
「今週末は田課たちとゴルフ宿だから、ボストンバッグをしておいてくれ」
夫はそう言ってかけていった。
玄関のドアが閉まり、鍵がガチャリとかかる音が響く。
私は静かにち尽くし、夫の音が完全に消えるのを確認した。
いつもの朝の景だ。
しかし、今からの私は何もらない従順な妻ではない。
私はエプロンをし、寝の奥にある夫の斎スペースへと向かった。
夫の机の番にある引きしには、いつも鍵がかけられている。
『会社の事な類が入っているから絶対に触るな』
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結婚した当初から、夫はそう言って私をざけてきた。
私はこれまでその言葉を信じて、1度も触れたことはなかった。
夫のプライバシーを尊することが夫婦の信頼だとっていたからだ。
けれど、その信頼はすでに無残に踏みにじられている。
私は迷うことなく、本棚の隅に置かれた古いゴルフのトロフィーにを伸ばした。
夫は几帳面なようで、実はとても単純なだ。
鍵の隠し所を変えたつもりでも、掃除をする私の目をごまかせるはずがない。
トロフィーの台座の裏にテープで貼り付けられたさな鍵を剥がす。
私はそれを引きしの鍵穴に差し込んだ。
カチリ。
たい属音が部に響き、い引きしがゆっくりといた。
には会社用の類ファイルがいくつか並んでいた。
その番奥に、分い茶封筒が隠すように押し込まれている。
私はその茶封筒をに取り、をテーブルのに取りした。
てきたのは数枚の公な類と、派な表のついた契約だった。
番にあったのは、『産売買契約』とかれた類だ。
昨夜義母が座っていたクッションの隙から見つけた、パンフレットのマンションだった。
購入価格は4500万円。
付として500万円が支払い済みとなっている。
その500万円という数字を見た瞬、私の胸がぎゅっと締めつけられた。
私がのものもパートに通い、スーパーの特売品を買い回り、自分のや化粧品もして貯めてきたおだ。