"「他人の姉に使う金はない」夫と800万円の新居" 第1話
夫の浩司はややかな目で私を見ろした。
「おの姉貴に使うなんてうちにはない」
彼は面倒くさそうに顔をしかめ、言葉を続けた。
「のために俺たちの老資を減らす気か」
リビングのテレビからは、バラエティ番組の軽な笑い声が流れている。
私は何も言い返さず、テーブルのにかれていた通帳に線を落とした。
そして、その通帳をパタンと静かに閉じた。
たった1しかいない肉親の姉が倒れたと病院から連絡があったのは、今の夕方のことだった。
すぐに術が必な状態だった。
しかし姉は1暮らしで、元にまとまったおがない。
姉は若い頃、自分の結婚や幸せを全て諦めて、両親をくした私を育ててくれた。
私が、学と学できたのも、姉が朝から晩までをにして働いてくれたおかげである。
そんな姉へ恩返しをするため、私は夫婦で20貯めてきた貯からしだけ治療費を貸して欲しいと夫にをげた。
私は閉じた通帳から顔をげ、夫の目を見つめた。
「でも、お義母さんが臓の術をしたは、この座から200万円をしたじゃないですか」
夫はで笑い、私から線をした。
私はさらに言葉を絞りした。
「あのは、私もパートを増やして支えました」
夫は苛ったようにため息をつき、私を睨みつけた。
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「当たりだろう。俺の親だぞ。おの姉貴とは違う」
彼はソファにく腰掛け、腕を組んだ。
「結婚してこのに入った点で、あっちのは完全ななんだよ」
夫はたい声で言い放った。
「いつまでも実にしがみついてるんじゃない」
。
その言葉が、たい刃物のように私の胸の奥をえぐった。
しかし、私は鳴らなかった。
泣き叫んで、夫のを責めることもしなかった。
ただ閉じた通帳のに両をね、じっとを向いていた。
夫が再びテレビに目を向けようとしたそのである。
テーブルに置かれた夫のスマートフォンが鳴った。
画面に表示されたのは「母さん」の文字だった。
夫は私をちらりと見てから、堂々と話にた。
「あ、母さん、どうした?」
話の向こうの声を聴きながら、夫は笑顔を見せた。
「うん、今週末だな。分かってるよ」
彼は嫌に言葉を続ける。
「予約した級だろう。特の寿司を頼んでおくから配するな」
夫は自げに胸を張った。
「ならあるから、好きなものをべてくれ」
話の向こうから、義母の甲い笑い声が漏れ聞こえてくる。
私の姉がの境を彷徨い、私が必にをげているというのに。
夫と義母は、週末の贅沢な事の話で盛りがっていた。
夫は話を持ったまま、私を横目で見た。
「由美?あ、あいつは連れてかないよ」
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彼は嘲笑するようにを鳴らした。
「同席しても気の利いた話もできないし、貧乏臭い顔をしてるだけだからな」
夫は楽しそうに笑い声をあげた。
「母さんと2でゆっくりべよう」
私の目ので、平然とそんな会話が続く。
義母は昔から私を毛嫌いしていた。
うちの息子に寄している女と呼び、顔を見るごとに見してきた。
夫もまたそんな義母に同調し、私を政婦のように扱うのが常になっていた。
話を切った夫は、勝ち誇ったような顔で私を見た。
「分かったらさっさと夕飯の支度をしてくれ」
彼はきく伸びをした。
「俺は仕事で疲れて腹が減ってるんだ」
夫はそう言って、ソファにごろりと横になった。
私はを押し殺し、く答えた。
「はい」
そして、テーブルのの通帳をに取った。
夫は、私がいつも通り諦めて理尽な扱いに黙って耐えているのだとったのだろう。
背を向けた夫からは、かすかなすら聞こえてきた。
けれど、夫は決定な勘違いをしている。
私が黙って通帳を閉じたのは、しみに打ちひしがれたからではない。
言い返す言葉が見つからなかったからでもない。
閉じる直、そこにあったの自然な記帳に、はっきりと気づいてしまったからだ。
私の元にあるこの通帳は、夫婦の老と万がの備えのためのものだ。
私が毎の活費を切り詰め、パート代も継ぎ込んで貯めてきた。
先記帳した点で、残は800万円ほどあった。