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"港に妻を捨てた次期社長候補の末路" 第8話

取引先、関、メディア、そして古くからの力な顧客まで招く予定だった。

そのなパーティーで、夫は次期社候補として初めてきな挨拶をすることになっている。

私が確認している資料のには、夫婦同伴の紹介文があった。

『森崎玲常務、ならびにご令・美緒様』

ご令

その印刷された文字を見て、私の喉の奥がカラカラに乾いた。

昼休みのになり、ナナさんが私をに呼んだ。

狭い空に、気ポットからい湯気がっている。

壁には誰かが貼った「マグカップは各自で洗うこと」というが、し斜めに傾いていた。

「昨、役員フロアで聞いた話なんだけど」

ナナさんは声を落とし、周囲を警戒した。

「玲さん、あなたがのお客様とトラブルになったみたいな言い方してた」

私はポットの湯気を見つめた。

のお客様?」

ナナさんは頷いた。

「詳細は言ってなかった。でも、奥様がで、も別にしたって」

置きりが、別という言葉になる。

言葉とは便利なものだ。

便利すぎて、を傷つけたの形まで綺麗に隠してしまう。

「ナナさん」

「うん」

私はナナさんの目を見た。

「その話、誰のでしてましたか?」

ナナさんはし言いにくそうに答えた。

「秘の松尾さんと、総務の部。それから、貴子会もいた」

義母も。

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私の胸のに、再びたいが落ちたような気がした。

そのの夕方、定で会社をると、ビルのに黒いまっていた。

部座席の窓が静かにがり、貴子さんが顔をした。

「美緒さん」

髪を綺麗にまとめ、藤のストールを品に巻いている。

とてもっている装には見えなかった。

むしろ、これからお茶会に向かうような穏やかさだった。

しおいいかしら」

私は断る言葉を探したが、受付の女性や通り過ぎる社員たちの線がある。

貴子さんはそれを完全に分かっていて、わざわざこの所に来たのだ。

分だけなら」

私はには乗らず、くのホテルラウンジを指定した。

森崎系列のホテルではない、駅のにあるし古いラウンジだった。

窓際の席に座ると、貴子さんは慣れた様子で茶を注文した。

私はだけでいいと断ったが、彼女は員に向かって優雅に微笑んだ。

「この方にも、同じものを」

そのさな、しかし無を言わさぬ支配に、以の私は何もじないふりをしてやり過ごしていた。

つの茶が運ばれてくるまで、貴子さんはかなかった。

内には静かなピアノの曲が流れ、隣の席では配の夫婦がケーキを仲良く分けっている。

「玲は、器用なところがあります」

貴子さんはティーカップにを添えながら、静かにいた。

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「でも、悪い子ではないの」

歳の夫が、義母のではまだ子供の扱いになる。

私は目の茶を見つめた。

「港で私を置いてったのは、器用だからですか?」

貴子さんの目がわずかに細くなった。

「夫婦には、から見えない事があるでしょう」

私は顔をげた。

「私にも、見えない事がありました。の同乗者とか」

カップの縁に添えられていた貴子さんの指が、ほんのしだけ止まった。

「美緒さん」

声は柔らかいままだった。

「賢い女性なら、見なくていいものを見ないこともできます」

私は目を逸らさなかった。

「見えたものは消えません」

貴子さんは静かに息を吸った。

「消す努力をするのが、族です」

私は目の茶の面を見た。

井のかりがさく揺れている。

「貴子さんは、さやさんをごですか?」

貴子さんはすぐには答えなかった。

そのわずかな沈黙だけで、答えとしては分だった。

「会社の広報案件で何度かお会いしています」

「港に来ていましたか?」

「そこまでは、私はじません」

嘘をつくは、すべてを否定しない。

否定しきれない部分だけを、らないという箱に入れて隠す。

私はその箱の形を、結婚してからので何度も見てきた。

「帰ってきなさい」

貴子さんは茶をんだい声で言った。

「玲も反省しています。

あなたが実にいること自体、周囲に余計な像をさせます」

私は黙っていた。

業記パーティーも控えているの。

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