"5足の男物スリッパと偽装不倫の罠" 第10話
『どうすれば、私を婚へ追い込めるのか』だったのだ。
裕介は携帯話をにく押し当てた。
「というのは、婚届のことですか?」
きよこさんは、しの答えるのをためらっていた。
やがてを決したように言った。
「まだ何もいていない用を、のり子が区役所から何枚か持ってきたの。片方が署名しなければせないと説したけれど、全く聞こうとしなかったわ」
私は仕事部の引きしをじっと見た。
あの付箋にあった問いが、私の胸のではっきりと形を持った。
裕介が尋ねた。
「なぜ、きよこさんに相談したんですか?」
きよこさんの夫は、い区役所で働いていたのだ。
今は退職しているが、のり子は昔から続きの裏技などを彼に聞きに来ていたという。
きよこさんの声が震えていた。
「『から嫁の名義をすには、まず婚させるしかないでしょう』って。私は、そんな恐ろしい考えはやめなさいと止めたのよ」
受話器の向こうで、きよこさんがい息を吐いた。
その声には、姉として妹の暴を止めきれなかったい責任が混じっていた。
きよこさんはさらに続けた。
「のり子は、『咲さんがに男を入れたらどうなるか』とも聞いてきたの。何の話か分からなくて、私は怖くなって帰ったの」
私のから、机の鍵が滑り落ちた。
さな属音が、静かな部の奥まで響いた。
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5の男性用スリッパ。
マリカがうっかりにした『証拠』という言葉。
婚のの方を調べる付箋。
それぞれ別々に見えていた気な点と点が、同じ真っ黒な方向を向いて繋がった。
私を、らない男をに引き入れた『貞の妻』という形に仕てげる。
そんな恐ろしい考えが瞬だけをよぎったけれど、まだ完全な事実とは言えなかった。
私はいつきをすぐには言葉にせず、きよこさんへ事実を確認した。
「その恐ろしい話を聞いたのは、いつ頃ですか?」
きよこさんは答えた。
「先の終わりよ。マリカも緒だったわ」
先の終わりは、のり子とマリカの2が無断で私たちのへ入り込んだよりものことだった。
つまり、のを測り始めてからいついた突発な話ではないのだ。
裕介は話を切った、力なく壁にをついた。
顔は真っ青だったが、母親へすぐ話して鳴りつけようとはしなかった。
裕介は自分自に言い聞かせるように呟いた。
「今聞いても、否定されるだけだ」
私はに落ちたたい鍵を拾いげた。
恐怖で指先がえ切っていて、うまくつまめなかった。
私はし息をえ、裕介にそれだけ伝えた。
裕介は何か言いかけたが、言葉をみ込んで仕事部をてった。
扉は音をてずに静かに閉まった。
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机のには、夫婦で選んだお気に入りの照があった。
壁には、このを買ったに2で撮った記写真を飾っていた。
写真のの私は、しい鍵をにして無邪気に笑っていた。
ここなら、して暮らせるとっていたのだ。
しかし今の私は、自分のので音に怯え、確認している。
机の引きしに鍵をかけ、玄関の映像を毎保している。
夫がける扉まで、疑わなければならなくなっていた。
私は机のから、旅用のカバンを引っ張りした。
仕事で使う資料と着替え、洗面用具を次々と詰め込んだ。
今すぐをると完全に決めたわけではない。
それでも、今夜こので無防備に眠れる自信が全くなかった。
類を畳んでいると、裕介が扉のから声をかけた。
「入ってもいいか?」
私はし迷ってから答えた。
「どうぞ」
彼は旅カバンを見ると、入りでピタリとち止まった。
「実へ戻るのか?」
私はを止めずに答えた。
「まだ決めていない。ただ、このにいると、次に何を仕掛けられるかばかり考えてしまう」
裕介は私を引き止めなかった。
代わりに、卓へ1枚のをそっと置いた。
それは、自分の張予定を取り消したことがはっきりと分かる、会社の連絡用だった。
『来の張は別の社員と交代した』とかれていた。
裕介は静かに言った。
「俺がいないを、母さんたちがっている。今はを空けない方がいいとった」
私はそのを見たまま、何も言えなかった。