"5足の男物スリッパと偽装不倫の罠" 第9話
マリカは私を憎々しげに睨んだけれど、引に箱を奪おうとはしなかった。
マリカは吐き捨てるようにさく言った。
「そんなに証拠が欲しいの」
裕介の顔が変わった。
「証拠って、何のことだ?」
マリカはハッとして、すぐにを閉じた。
今の言葉を取り消せないと悟っているようだった。
私は玄関のカメラを静かに見げた。
「マリカさんが入ってからの会話は、全て記録されています。今の映像は保します」
私が毅然と言うと、マリカの呼吸が浅くなった。
「族の会話まで録るなんて、気持ち悪い」
私はややかに返した。
「族だから、何をしても記録されないとっていたの?」
マリカは言い返せなかった。
裕介は無言で玄関の扉をけた。
「今は帰ってくれ。母さんにも伝えてくれ。もう咲の許なしに、こののことを勝に決めさせない」
マリカは逃げるように靴を履き、へた。
扉が閉まる直。
彼女は私ではなく、兄の裕介を見た。
「お母さん、本当に1になるよ」
その声には、脅しよりもい恐れが混じっていた。
裕介は切答えなかった。
裕介は扉を閉め、ゆっくりと鍵をかけた。
私はスリッパの箱を抱え、仕事部へ運んだ。
ただの5のスリッパは軽いはずなのに、私の腕には酷くくじられた。
裕介は私からしれたところでち止まった。
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彼はくうつむいた。
「ごめん。また俺が勝に入れた」
私は箱を机の奥へ押し込んだ。
私は振り返り、彼に尋ねた。
「昨の約束は何だったの?」
彼はすぐには答えられなかった。
私は彼が言葉を探す沈黙を待った。
裕介は苦しそうに絞りした。
「マリカが困っていると言うと、確かめるに助けなきゃとった。子供の頃から、ずっとそうしてきた」
私の声は震えていなかった。
「その度に、私の全は回しになるの?」
裕介は目を伏せた。
「そう、なっていた。俺は母さんたちの嫌を守ることが、族を守ることだとい込んでいた」
私は仕事用の子に腰をろした。
こので番辛かったのは、のり子の悪ある言葉だけではない。
裕介が、全く悪のない顔で、私を守るはずの扉を何度もけてきたことだったのだ。
私は彼にまっすぐ伝えた。
「私はあなたに、母親を捨てて欲しいわけじゃない。私を差しして、見せかけの族の形を保たないで欲しいだけ」
裕介はい黙り込んだ。
やがて彼は、玄関の予備鍵を入れていたさな箱を持ってきた。
彼はをすべて空にし、空っぽになった箱そのものを私へ渡した。
裕介は決を込めて言った。
「鍵も予定も、俺1では決めない。次に誰かをへ入れるは、必ず咲に先に聞く」
私はその箱を受け取らなかった。
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「言葉ではなく、で見せて」
裕介は箱を私の机のへそっと置いた。
その表には、傷ついた様子よりも、私の拒絶を受け止めようとするい緊張があった。
夜になり、保した防犯カメラの映像を2で確認した。
マリカが靴箱へまっすぐ向かった面。
母親から届いた連絡を慌てて隠した面。
『証拠』という言葉をうっかりにした面。
映像の再を止めた、裕介が呟いた。
「母さんは婚させたいだけじゃないのかもしれない」
私は画面に映る、5の男性用スリッパを見た。
ただ婚届をかせるだけなら、らない男たちの履き物は必ないはずだ。
その、マリカの携帯話に表示された文面が、全く別の恐ろしいを持ち始めた。
『く持ち帰って。兄にはまだ言わないで』
私は翌、桜商にある用品へくことを決めた。
誰が、いつ、これらを買ったのか。
今はまださな疑問でも、自分ので確かめずにはいられなかった。
翌朝、かける支度をしていると、裕介の携帯話がけたたましく鳴った。
画面には、きよこさんの名がていた。
裕介が話にると、受話器から切迫した声が漏れ聞こえてきた。
「のり子がまた、あのを用しているの」
きよこさんは声を潜めていた。
「今度は、咲さんにられたらまずいと言っていたわ」
裕介は驚いて私を見た。
私は昨夜鍵をかけた引きしへ、そっとを置いた。
あの付箋の問いには、もう恐ろしい続きがあるのだ。
『婚はどうなる?』ではない。