"5足の男物スリッパと偽装不倫の罠" 第8話
裕介は困惑した顔で説した。
「で待っていたんだ。忘れ物を取りたいと言うから、しだけならと」
昨、母親にも妹にも絶対に鍵を渡さないと言ったばかりだった。
それなのに、物理な扉は彼のによっていとも簡単にけられていた。
マリカは靴箱のにしゃがんだまま、ゆっくりと振り返った。
「私が置いたものを、取りに来ただけです」
私はマリカに詰め寄った。
「何を置いたの?」
私が尋ねると、マリカは箱の奥へ引にを伸ばした。
裕介がその首を掴む代わりに、靴箱の扉をバタンと閉めた。
裕介は妹を睨んだ。
「咲に説しろ」
マリカは渋々ちがり、くかぶっていた子を取った。
額にはくや汗が浮かんでいた。
「来客用のものだよ。お母さんに頼まれてに持ってきただけ」
私は追及のを緩めなかった。
「誰の来客なの?」
私が聞くと、マリカはきつく唇を結んだ。
裕介が自ら靴箱をけ、例の段ボール箱を取りした。
蓋をけ、5の男性用スリッパを無言でへ並べた。
裕介のい声が響いた。
「5も誰を呼ぶつもりだった?」
彼の問いに、マリカはげさに肩をすくめた。
「親戚かもしれないでしょう。数なんてたまたまだよ」
裕介はりを押し殺した声をした。
「親戚なら、なぜ俺たちに黙っておく」
マリカは急に私を鋭く睨んだ。
「全部咲さんのせいじゃない」
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その言葉は、私に向けたというより、追い詰められた自分を守るためにびしたように聞こえた。
マリカは声を震わせた。
「兄さんが族を疑うようになった。鍵を変えてカメラまでつけて、普通じゃないよ」
裕介はすぐに言い返した。
「無断で入らなければ、必のなかったことだ」
マリカの目がきく揺れた。
頼りの兄が、自分を庇わなかったことに初めて気づいた顔だった。
マリカは劇のヒロインのように訴えた。
「お母さんがどれだけ傷ついているか、兄さんはらない。30以育てた息子が、嫁の言うことばかり聞くんだよ」
私は何も言わず、そのにっていた。
その沈黙は、以のように波をてまいと耐えるためのものではなかった。
マリカが体何を隠しているのか、言葉の続きを引きすために待っていたのだ。
裕介も妹を急かさなかった。
壁の計だけが、カチカチとさく秒を刻んでいた。
マリカはついに線を落とした。
「このだって、お母さんは兄さんのためにあるとってた」
裕介が静に事実を告げた。
「のくは咲がしている。名義も俺たち2のものだ」
マリカの声がしくなった。
「そんなことを言ってるんじゃない」
マリカは弁解するようにになった。
「お母さんは、兄さんが帰って来られる所を残したいだけ。
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咲さんと何かあった、全部取られたら困るから」
その言葉で、あの付箋のがしはっきりとした形に変わった。
『婚はどうなる?』
あれはただの素朴な疑問などではなかった。
のり子は、私たち夫婦の婚を提に、の方を具体に考えていたのだ。
しかも、私にられない形で気な準備をめていた。
私はマリカに問いかけた。
「何かあったとは、何?」
マリカは答えず、自分の携帯話をぎゅっと握り直した。
その、マリカの携帯の画面に『母』と表示された着信が浮かんだ。
マリカは話になかったけれど、数秒にい通音が鳴った。
画面には『く持ち帰って』というメッセージの部が見えた。
そのには『兄にはまだ言わないで』と続いていた。
裕介も、その画面の文字を見逃さなかった。
裕介が歩づいた。
「母さんは何を隠している?」
マリカは慌てて携帯話の画面を伏せた。
「別にしたことじゃない」
裕介は譲らなかった。
「ではここで話して確認しよう」
マリカは恐怖をじたように歩がった。
その自然なきで、玄関にてかけてあった傘に肩が触れた。
乾いた音をてて、傘が1本へ倒れた。
マリカは逃げるように言った。
「今は帰る」
マリカはスリッパの入った箱へを伸ばした。
私はそのにちふさがり、箱の蓋をパタンと閉めた。
「これはまだ置いておきます。私のにある、私のものです。私たちのに無断で持ち込まれたものですから」