"5足の男物スリッパと偽装不倫の罠" 第6話
たった5のスリッパだった。
それでも、なぜ男性用だけを5も揃えたのかが気になった。
親戚の集まりなら、当然女性用のスリッパも必になるはずだ。
マリカの引っ越しに使うものでもない。
説のつかない気な数だけが、私たちの玄関に残されていた。
裕介は顔を険しくし、母親へ話をかけようとした。
私はを伸ばし、そのを静かに止めた。
「今聞いても、誰かが置き忘れたと嘘を言われるだけだとう」
私は自分の声が驚くほど落ち着いていることに気づいた。
「まず、いつからあったのか確かめたい」
言いながら、私は自分自の確かな変化に気づいた。
以の私なら、すぐに理由を尋ねてしようとしていたはずだ。
今は、相の返事より先に、確かな事実を残そうとしていた。
私は箱とを、置かれていた状態のままスマートフォンで撮した。
スリッパについたままの値札と、の札も別に記録した。
それから、箱を元の所へそっと戻した。
裕介が議そうに聞いた。
「片付けないのか?」
私は靴箱の扉をゆっくりと閉めた。
「相がまだ、私たちが気づいていないとっているなら、そのままにしたい」
裕介はし迷ってから、納得したように頷いた。
母親へすぐに話をしないという私の判断を、彼が素直に受け入れたのは初めてだった。
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午、防犯設備の業者の担当者がへ来た。
玄関のと、1階の廊にさなカメラを設置することになった。
寝や居には設置しなかった。
族の活まで見張りたいわけではなかったからだ。
い鍵を持っていたが、いつ、どこへ入ったかを正確に残したかった。
担当者は玄関の柱の度を確かめながら説した。
「内は廊だけで分でしょう」
担当者はカメラの角度を調した。
「の顔と、入った部が分かる位置にします」
その言葉を聞いた、私は自然と仕事部の扉を見た。
マリカが寸法を測り、写真を撮り、みたいと言った所だった。
設置作業の途、突然玄関の呼び鈴が鳴った。
モニターを見ると、のり子が袋を持ってっていた。
扉のにあるしいカメラを見ると、のり子の線が瞬だけ止まった。
けれど、すぐに穏やかで品な笑顔を作った。
「随分げさなことをするのね」
のり子は扉をけた私に向けて言った。
「族を棒みたいに扱うつもり?」
私は扉を半分だけけたまま、静に答えた。
「何度も無断で入られましたから、記録を残すことにしました」
のり子は私ではなく、奥にいる裕介を見た。
「あなたまで賛成したの?」
裕介は廊からく答えた。
「俺が頼んだ」
のり子の元から、完璧だった作り笑いが消えた。
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それでも、担当者のでは決して声を荒げなかった。
のり子は世体を気にするように声を潜めた。
「所に何とわれるかしら。親子でも揉めているだとられたら、あなたたちも困るでしょう」
裕介の返事は、以よりもずっとかった。
「困るようなことをしなければいい」
のり子は満げに袋を持ち直した。
には煮物の容器が入っていると言った。
私はを伸ばさず、受け取らなかった。
「蔵庫に作り置きがありますので、今は結構です」
のり子はしばらくの、私の顔をじっと睨むように見ていた。
やがて袋を自分の胸元へ引き寄せた。
「嫁に来てから随分変わったわね。はもっと素直だったのに」
その言葉に、裕介が歩にて何か言おうとした。
私は彼をで制し、さく首を振った。
今はに言い返す面ではなかった。
のり子の目が、扉ののカメラから廊の奥へ、探るようにいたことの方がだった。
私はあえて、のり子に尋ねた。
「マリカさんはお元気ですか?」
のり子は答えるまでに、し自然なを置いた。
「元気よ。仕事が忙しくて、しばらくこちらには来ないわ」
昨まで引に部を使いたがっていたが、急に来ないという。
その極端な変化は、あまりに自然だった。
私はそれ以く聞かなかった。
「そうですか」
のり子が帰る、靴箱の方を度だけチラリと振り返った。
ほんのい無識のきだったけれど、私は決して見逃さなかった。