"姉の代わりに嫁いで6年――総支配人夫人の姉と再会した日" 第4話
姉が断った夜
母から話が来たのは、その晩だった。
「瑞穂から聞いたわよ。あんな所で恥をかかせて、どういうつもり?」
私は夕の皿を流しへ運びかけていた。携帯を肩で挟むのをやめ、皿を置いてから聞き返した。
「お客様の部を変えなかったこと?」
「そういう細かい話じゃないの。、顔をしなさい。お父さんも話があるって」
翌の夕方、実の居に入ると、姉が母の隣に座っていた。父のには聞が畳んである。私の分の湯呑みだけがなく、母は座るにお湯を沸かしてと言った。
私は台所へかず、空いている子を引いた。
「話をしに来たんだから、先に聞くね」
母はし唇を尖らせたが、自分でった。姉はその背を見送り、私に顔を向けた。
「会社がきくなったら、ずいぶん偉そうになるのね」
「予約した方をかしていい理由にはならないでしょう」
「だから、その話じゃないってば。私が何もらないとって、わざとあんなふうに紹介させたんでしょ」
父が聞のにを置いた。
「紗。姉さんの友達もいたんだろう。ててやれば済んだ話じゃないか」
私は父のを見ていた。6、縁談の封筒を揃えていたも、父は相の顔を見ずに話していた。紹介者への義理はの娘で果たした。親戚のでそう言っただけ、胸を張った。
「あのと結婚できたの、誰のおかげだとってるの?」
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姉が言った。
「私が譲ってあげなかったら、今の暮らしはなかったんだから」
「お姉ちゃんは、断ったんだよね」
「断ったっていうか、考えてるところだったの。それをあんたが先に会いにって」
聞いたことのある言い方だった。結婚、親戚からも同じことを聞かされた。あのは否定しかけた私を、母が止めた。姉妹で言いうのは恥ずかしい、と。
私は携帯をテーブルに置いた。
「じゃあ、順番を確かめよう。樋さんに聞くね」
「今さら話なんて迷惑でしょう」
母がお茶を置くを止めた。私は父を見た。
「紹介してくださったに、違う話が伝わったままでもいいの?」
父は答えなかった。姉は携帯をに取り、画面を眺め始めた。私は席をち、廊で樋さんに話をかけた。
が丈夫か確かめてから、当の経緯を聞いた。樋さんはし黙り、落ち着いた声で答えた。
「お姉さんから断りの話をもらって、それをご両親に伝えたよ。そので、お父さんから紗さんの話がたんだ」
「私が先に会いにったわけでは、ありませんよね」
「違う。順番が逆になることはないよ。ご両親にも、必なら私から話す」
私は礼を言った。携帯を持つに汗をかいていたが、今度は言いかけたことをみ込まずに済んだ。
居へ戻り、樋さんから聞いた内容をそのまま伝えた。
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母は、もう済んだ話でしょうとお茶を勧めた。
「済んだ話なら、これから私の結婚を恩に着せるのもやめて」
姉が顔をげた。
「それでも、結果には謝するところじゃない?」
「結婚するかどうかを、私に聞いてくれたのは馬さんだったよ」
初めて会った喫茶で、馬は帳面を閉じて言った。嫌なら断ってください。会ったという形があれば、ご両親にも断りやすいでしょう、と。族ので言えなかったことを、その初めて会ったが言ってくれた。
父がさく咳をした。
「とにかく、瑞穂に謝っておきなさい」
「謝らない。お客様の予約を守ったことを、取り消すつもりもない」
私は湯呑みに触れず、ちがった。母が何か言ったが、玄関で靴を履いているは聞き返さなかった。帰る刻まで、ここで決めてもらう必はなかった。
駅へ歩く途、芦田さんから連絡が入った。を止めて読むと、同じ角部の利用記録について確認したいとある。
添えられた覧の件数を見て、私は画面をるくした。
無料の予約が、70件あった。