"姉の代わりに嫁いで6年――総支配人夫人の姉と再会した日" 第2話
その部には予約があります
「冗談だとっただけよ。だって、あの会社がこんなところを買えるなんて」
姉が説しているに、敬吾さんは馬へくをげた。
「妻が失礼いたしました。本のご来館は午と伺っておりましたので」
「く着いたのはこちらの都です。打ちわせは予定通りで結構です」
馬の返事を聞いても、敬吾さんはすぐに姿勢を戻さなかった。さんに促され、ようやく顔をげる。しい代表が誰か、っていたの反応だった。
「あなた、ってたの?」
「その話はにしよう」
敬吾さんは姉をラウンジの方へ促した。ところが姉は、今度は私に腕を絡めようとした。
「紗も言ってくれればよかったのに。族なんだから、くさいじゃない」
私は鞄を胸のへ持ち直した。姉の指は持ちに触れ、そこで止まった。
「さっきまで帰れって言っていたでしょう」
「帰れなんて言ってないわよ。配したの」
姉は連れの女性たちを振り返り、もう丈夫だと言いたげに笑った。その1が、計を見ながらフロントへ目を向けた。
「瑞穂ちゃん、来週のお部だけ確認してもいい?」
「そうだった。いつもの角部、お願いしてあるのよ」
姉は私の返事を待たずにカウンターへ歩いた。敬吾さんの肩がわずかにがった。私はそのきを見てから、姉のを追った。
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フロントの女性の名札には、林とあった。姉の婚礼の、裏方の伝いでち尽くしていた私を案内してくれただ。5経っても、両を揃えて客の話を聞く姿勢は変わっていなかった。
「来週の曜から2泊よ。まゆみさんたちが泊まるから」
林さんは画面を確かめ、言葉を選ぶように顔をげた。
「そちらのお部は、すでに別のお客様のご予約が確定しております」
「だから、その方を別の部にしてってお願いしたでしょう。うちのにも言ってあるわよ」
「総支配には、ご予約を変更せずにご案内できる別をご提案しております」
姉がく息を吐いた。連れの女性たちはしれたところで、携帯を見たり、入を振り返ったりしていた。
「別の部じゃがないの。あの窓から写真を撮りたいんだから。ねえ、紗。それくらいできるでしょう?」
私は林さんに名刺を渡した。
「かりの倉紗です。今回の客運用を担当しています。元のご予約は、今どうなっていますか」
「変更はしておりません。お客様にも、まだ何もお伝えしておりません」
「では、そのままお守りください」
姉が私の名刺を横からのぞき込んだ。企画統括の文字を読んだのか、眉を寄せる。
「仕事の話じゃなくて、族のお願いをしてるのよ」
「予約した方にとっては、族の事なんて関係ないでしょう」
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私の声は、自分でっていたより落ち着いていた。喉の奥は乾いていたが、言葉を引っ込めたいとはわなかった。
林さんは名刺を両で持ったまま、敬吾さんを見た。私から頼まれただけでは、このはで困る。私は振り返り、敬吾さんにも同じことを尋ねた。
「先に確定したご予約を守る運用でよろしいですね」
「……もちろんです。林さん、変更はしないでください」
そこで初めて、林さんの肩から力が抜けた。
「承いたしました」
姉はカウンターに置いた鞄を引き寄せた。具が板に当たり、さな音がした。
「そんな言い方、しなくてもいいじゃない。まゆみさんたちので」
「その部を予約したのでも、同じことを言える?」
姉は私を見たが、答えなかった。まゆみさんが、またを変えようと言って姉を入へ連れていった。
林さんは予約記録に対応内容を入力した。続いて、予定していた到着の確認話をかける。ご予約のお部でお待ちしております。その言葉を聞き、私はようやく持ちから指をした。
カウンターの端に、今の昼分らしい伝票があった。4名分のに、販売促費という文字が見えた。林さんはそれを所定のトレーへ入れたが、私の線に気づいてきを止めた。
「倉様。本社へお送りした、お客様のご見の控えは届いておりますか」
「はい。読ませていただいています」
林さんは、敬吾さんがさんと話している方を度見た。それから、私にだけ聞こえる声で言った。
「あの3分を残していたのは、私です」