"「帰ってこなくていい」と笑った家族――20年目の離婚届" 第4話
55続いた縁
父と栄物産の修社は、代から55続く友だった。
父が勤めていた会社を期退職したさんは、30に栄物産をちげた。創業当初、父は取引先を2社紹介したらしい。ただし、そのは経営にも事にも切をしていなかった。
父の机の引きしには、創業直の栄物産の名刺が残っていた。角が黄ばんだいに、当は専務でも社でもなかったさんの名が印刷されている。父はそれを度眺めてから、元の所へ戻した。
「浩司君が入社した、修に度だけ言った。娘婿が世話になるようだが、特別扱いはするなとな」
縁側で話す父の声は淡々としていた。私は初めて聞く話だったが、浩司はっていた。昇した夜、酔った彼が得げににしたことがある。
「おの親父の名があるから、俺は社にも話を通しやすいんだ。おは余計なことをせず、俺を支えていればいい」
別の会から帰った夜には、「共精の会だって、お義父さんの名をってる」と笑っていた。私が父の名を仕事に使わないでほしいと言うと、浩司は「脈も実力のうちだ」と取りわなかった。その脈を築いたのが自分ではないことだけは、都よく忘れていた。
そのは酔言だといたかった。けれど、父の話を聞いた今、胸の奥で別々だった記憶が本につながった。
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「お父さん、会社へ何か頼むつもり?」
「頼まん。夫婦の問題を会社へ持ち込む気もない」
父はそう答えたあと、古い所録からさんの番号を探した。話をかけたのは、そのの夜だった。
「修か。遅くにすまんな」
縁側の網戸越しに虫の声が入り、母は台所で麦茶を注いでいた。私はしれた座布団に座り、父の横顔を見ていた。
「浩司君と真由美は、今婚した。事はのことだから話さん。ただ、これからはわしとの縁を考えて、あの男に気を使う必はない。仕事は本の実績だけで見てくれ」
受話器の向こうで、さんが何か尋ねた。父は度だけ首を横に振った。
「処分を頼んどるんじゃない。今まで通り、公平に見てくれと言っとるだけだ」
父の声にはりより疲れが滲んでいた。娘を守るために友へ圧力をかければ、浩司と同じように関係を具にしてしまう。だから父は、く続いた縁を武器にするのではなく、ただ相のから引きげたのだ。
話は5分ほどで終わった。父は受話器を置くと、それ以何も話さなかった。
同じ頃、自宅では浩司が蔵庫をけ、3個目の保容器を卓へしていた。里奈は洗濯かごを覗き込み、いと物を緒に入れていいのか分からず、結局ふたを閉めた。私のスマートフォンには《いつ戻るの》《洗剤がない》《2万円まだ?》という通が並んでいた。
里奈からは、しを置いて《パパが嫌悪いんだけど、ママから何か言って》とも届いた。私は文章を読み、返信欄をいてから閉じた。これまでは浩司の嫌まで私がえてきた。それも事の部だと、3とも疑わなかったのだ。
私は画面を伏せ、母が切った瓜をに運んだ。甘い汁が舌に広がるまで、誰も私に返事を急かさなかった。
翌朝、さんは通常より30分く社した。
社へ入ると、営業本部と事担当役員を呼び、来週から始まる共精との型案件について資料をさせた。取引額は8億円。責任者には浩司の名が記されている。
さんは、その名の横へ指を置いた。
「国君を選んだ提を、度全部洗い直そう」