"251840円の正月料理を持ち去った義母" 第8話
9分の正
由のノートには、結婚したから昨まで、9回の正について細かな記録が残されていた。
参加数、購入した材、産の送り先、アレルギー、料理を始めた刻。支払額の横には、ネット注文の番号や保してある領収の所までかれている。字は最初の頃ほど丁寧で、を追うごとにさく、余がなくなっていた。
「1231、午440分始」「午2、昼は台所でったまま」。料理名のには、そんない記録も混じっていた。あるには「が38度1分。休みたいと伝えたが、親戚が楽しみにしていると言われた」とある。そのの支払額は19万6200円だった。
「最初のは12万4300円でした。数が増えたり、蟹やお肉を頼まれたりして、しずつくなりました。今の25万1840円までわせると、私が払った額は167万8000円です」
由の声は震えていたが、言葉は途切れなかった。
「お義母さんから、“男のの評判になるからい物はさないで”と言われていました。でも、費用をいただいたことは度もありません」
「待ちなさい」
母が慌てて割り込んだ。
「あなたが好きでやっていたことでしょう。頼んだ物もあるけど、全部私が制したみたいに言わないで」
由はノートから顔をげた。母と正面から目をわせるまでに数秒かかったが、今度は線をそらさなかった。
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「好きで作った料理もありました。皆さんにんでもらえるのは嬉しかったです。でも、台所で事を取れなくても、が切れて血がても、“嫁なら当たり”と言われるのは苦しかったです」
由はの親指をで包んだ。昨夜、昆布を切っているにいた傷へ、細い絆創膏が巻かれている。私は何度も見ていたはずなのに、そのさな傷が9のどこへつながっているのか、今まで考えようともしなかった。
座敷の端にいた従妹が、いしたように元を押さえた。
「そういえば、由さんが緒に座ってべているところ、見たことがないかも……」
「私も。毎、久さんが用した料理だとっていたわ」
親戚たちの声が次々にがる。これまで母が受け取ってきた謝が、逆向きの線となって斉に返っていく。
母は「昔から男の嫁がすることよ」と言い張ったが、賛同する者はいなかった。むしろ、毎価な蟹を送ってくれた礼を母に伝えていた伯父が、申し訳なさそうに由へをげた。その姿を見て、母は初めて、自分が失ったのは料理ではなく、親戚ので築いてきた信用なのだと悟ったようだった。
恵子伯母は由のへ移し、畳に両をついてをげた。
「気づかなくてごめんなさい。私たちも、あなたが働くのを当然だとっていた。
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べるだけべて、度もきちんと礼を言わなかったわ」
「伯母さんまで謝らないでください」
「いいえ。らなかったでは済まないこともあるの」
その言葉を聞き、父の正雄が顔を伏せた。私には、それが自分へ向けられた言葉にも聞こえた。母のそばで見ていながら止めなかった父と、妻の隣にいながら9黙っていた私に、違いなどほとんどなかった。
由はノートを閉じ、荒れた指で表をゆっくりとなでた。
「私がこの記録をつけたのは、おを返してほしかったからではありません。失敗して責められないように、自分を守るためでした。でも、もう必ありません」
由は母を見つめ、静かに告げた。
「お義母さんのために正を用するのは、今で終わりにします」
母は何か言い返そうとしたが、親戚たちのたい線に囲まれ、声をせなかった。
その、それまで黙り込んでいた父が、震えるで杯を座卓へ置いた。
「の話なら……まだある」
父は私を見ずに、かすれた声で続けた。
「直が毎送っている6万円のことも、話さなければならない」