"15冊帳簿の専業主婦" 第5話
それは、私が結婚してからの、も欠かさず記録し続けてきた冊の『庭収支帳簿』だった。
ページをくと、そこにはスーパーの円単位の特売品、気代、代の推移、娘の学用品の購入費に至るまで、すべてのレシートが几帳面に糊付けされ、ボールペンの楷で狂気とは対極にある理然とした致でびっしりと埋め尽くされていた。
「毎、健司さんから活費として預かる万円のから、費を万千円に抑え、余剰を毎万千円ずつ定期預に回してまいりました。過、帳簿の数字と残がわなかったはもございません。また、私が作ったとされる消費者融の借入ですが――」
私は帳簿の付箋をめくり、片の目のに指先を突きつけた。
「借入が実されたの午、私は咲良の学の者面談に席しておりました。学の入記録および担任の先の署名入りの面談票がこちらにございます。平のそのに、私が池袋の無契約へけるはずがございません」
片の万のきが、完全に止まった。 ページをめくるごとに、医師としての彼の顔が青ざめていく。
これほど精緻で論理な計管理を継続し、アリバイまで完璧に揃えているを「度の精神錯乱」
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「財産管理能力の喪失」と診断することなど能だ。もし裁に持ち込まれれば、虚偽診断作成の罪で医師免許を吹きばされるのは片自だった。
「……健司君」
片が鏡を押しげ、健司に向かってく囁いた。その声にはらかな警戒と苛ちが混じっていた。
「事に聞いていた話と、まったく違うじゃないか。奥様の認能、見当識、記録能力は極めて正常だ。この状態で見始の見などけるわけがない。僕を巻き込むな」
「片、待てよ! こいつは面を取り繕うのが異常にいんだ!」
健司が焦燥を隠しきれずにちがったが、片はたく首を振ると、逃げるようにアタッシュケースを閉めて玄関へと向かった。
バタン、と玄関のドアが閉まる。 リビングに残された健司は、額に青筋を浮かべ、正座する私を殺に満ちた目で見ろしていた。
「……お、よくも恥をかかせてくれたな」
「何のことでしょうか、あなた」
私はちがり、ややかに見返した。
「今夜の夕飯の買いしにってまいります。駅のスーパーまで」
健司はギリギリと奥歯を噛み鳴らしたが、片が逃げした以、今すぐ力づくで私を拘束することはできない。
「……ってこい。だがな真由美、おがいくら掻こうと、結果は変わらないんだよ」
午。 私は自宅をると、最寄りのスーパーへ向かうふりをして、のにを潜めた。
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肩にかけていた布製トートバッグの底板を探る。縫い目に沿って、指先にい異物が触れた。爪をてて布を引き裂くと、から転がりたのは、百円玉ほどのいプラスチックの円盤――紛失防止用のGPSトラッカー、
AirTag
だった。
健司だ。 私の居所を、元のスマートフォンで常に監していたのだ。
私は笑を浮かべると、目ののコインパーキングにまっていた鮮品の保配送の荷台の隙に、そのAirTagを滑り込ませた。これで、私の現は都内をり回る配送とともに偽装できる。
私はに私鉄にび乗り、駅先のターミナル駅へ向かった。 駅の雑居ビルにある区民相談窓の奥、予約していた法務援助ブースのドアをける。
そこに座っていたのは、代からの親友で、現は政士として困窮庭の法務支援をっている柴田晶子だった。
「真由美! 連絡もらって急いで調べたわよ。……とんでもないことになってる」
晶子は周囲を警戒しながら、机のに分い調査資料を広げた。
「健司さんの信用報と、自宅産の登記簿謄本よ。……彼、半にの無登録FXファンドで損をしてるわ。その穴埋めに、消費者融や怪しげなから借りまくって、負債総額は
千百万円
を超えている」
息が止まりそうになった。
「それだけじゃないわ。自宅のと建物に、すでに極度額千万円の根抵当権仮登記が設定されかけてる。