"母に買った家を狙う婚約者" 第5話
私は相槌を打ちながら待った。
やがて彼は、カップの縁を指でなぞりながら言った。
「それでさ。昨のマンションの話なんだけど」
来た。
私は何もらない顔で見返した。
「何?」
「現で括で買ったの?」
「はかなり入れたけど、全部ではないよ」
「どのくらい?」
「どうして?」
健は笑った。
「夫婦になるんだし、お互い資産状況を把握しておいた方がいいじゃないか」
「それなら健の貯も見せてくれる?」
ほんの瞬、彼の顔が固まった。
「もちろん。そのうちね」
「そのうち?」
「今は座がいくつかに分かれてるからさ」
私はのでつ数えた。
また曖昧な返事。
健は続けた。
「母さんがね、結婚に度、由美の通帳のコピーを見せてほしいって」
「私の通帳を?」
「形式みたいなものだよ」
「誰に見せるの?」
「母さん」
「どうして?」
健はし苛った。
「結婚に計を任せられるか確認したいんだって。親として配なんだよ」
「計を任せられるかどうかと、貯残って関係ある?」
「由美、いちいち突っかからないでくれよ」
その声に、昨のたさが戻った。
「夫婦になるんだから、隠すことなんてないだろ。僕は由美を信用してるよ」
私はわず笑いそうになった。
信用している相に、3000万円の保証債務を隠したまま。
私の通帳だけ見せろと言う。
「分かった。コピーを用する」
私が答えると、健の顔がるくなった。
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「本当?」
「うん」
「やっぱり由美は話が分かるよ」
彼は私のに触れた。
そのを、私は初めて気持ち悪いとった。
翌の昼休み。
私はへった。
マンション購入にも、ある程度の預は残っていた。何かあったのための活防資と、将来のための積だった。
私は結婚準備用に使う予定の300万円だけを残し、それ以を別の座へ移した。
もちろん、隠すためではない。
私のおを、私ので管理するためだ。
をたあと、先にも報告した。
「通帳を見せる必はないんだよ」
「分かっています」
「それでも見せるのかい?」
「300万円だけ残してある座を見せます」
先はし驚いた。
「何を確かめたい?」
「私に300万円しかないとった、あのたちがどう反応するかです」
先はしばらく黙った。
「無理はしないで」
「はい」
週末。
子から話があった。
驚くほど優しい声だった。
「由美ちゃん、通帳のコピーを用してくれたんですって?」
「はい」
「良かったわ。私もした」
それだけで終わるかとった。
しかし子はし声を落とした。
「それと、お母様に買ったマンションの類も持ってきてくれる?」
「何のためですか?」
「名義やローンのことを確認したいの」
「なぜ?」
「あなたの資産でしょう? 結婚したら、いざというには族全体のために使えるものじゃない」
私は窓のを見た。
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母がベランダで洗濯物を取り込んでいた。
痛む膝をかばうように、ゆっくりいている。
「母がむです」
「分かってるわよ。でも、お母様1にはし広いでしょう。将来もし私たち族に何かあった、売ればかなりのおになるじゃない」
「私たち族?」
「健と結婚したら、私たちも族でしょう」
で私に言った、
《自分の実ばかり優先するな》
という言葉がに浮かんだ。
私の母へ使うのは「実を優先」。
自分たちのために使うのは「族だから当然」。
あまりにも都がいい。
「分かりました」
私は答えた。
「曜に持っていきます」
子は満そうに話を切った。
私はすぐに録音データを保した。
曜。
健の実へ着くと、子は寿司まで取っていた。
正もいた。
以より随分痩せて見えた。
「由美ちゃん、いらっしゃい」
子は笑顔で迎えたが、線は私のバッグかられなかった。
「お願いされていたものです」
私は茶封筒をした。
子はすぐにいた。
健も隣から覗き込んだ。
数秒。
2のきが止まった。
コピーには、
《残 3,000,000円》
と印字されている。
「……何よ、これ」
子が呟いた。
「現、結婚準備に使う予定の座です」
「300万円?」
声がくなった。
「あなた、もっと持ってたでしょう!」
「母のを買いましたから」
「そんなはずないでしょう!」
子はちがった。
「これっぽっちじゃ、うちのローンが——」
そこまで言って、を閉じた。
私はゆっくり顔をげた。
「今、何とおっしゃいました?」
部の空気が凍った。