"母に買った家を狙う婚約者" 第2話
健も度だけ母親の方を見た。
2の反応は、私が像していたものと違っていた。
普通なら「もちろんよ」と答えれば済む話だった。
なのに誰も答えない。
私はテーブルので、自分のバッグの持ちに触れた。
には茶封筒が入っている。
2はまだらない。
私が昨の夜、健の部で見つけたものを。
そして、なぜ今の私は、あれだけ失礼な言葉を浴びせられても議なくらい静でいられるのかも。
い沈黙のあと、健が乾いた声で言った。
「おのことは……またで話そう。今はせっかく両で事をしてるんだし」
「そうね」
私はさく微笑んだ。
「結婚はの問題だもの。隠し事を全部なくしてからめたいわ」
健の肩が、わずかに揺れた。
その反応を見た、私ので何かが確信にづいた。
事を終え、をた直だった。
私のスマートフォンが震えた。
数から相談していた弁護士の先から、いメッセージが届いていた。
《確認を依頼されていた件、裏付けが取れました。の午、事務所へ来られますか》
私は画面を閉じた。
し先では、健が子の背にを添えながらタクシーを止めている。
私はたい夜気を吸い込んだ。
2はまだ、自分たちが隠し通せているとっている。
けれどその嘘は、もうほとんど私ののにあった。
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私が母の恵子と暮らしていたのは、築40を超えた古い賃貸アパートだった。駅から歩いて15分、エレベーターはなく、4階の自宅まで階段をらなければならない。れたはまだいいが、のには錆びたすりが濡れ、母がを滑らせないか私はいつも気にしていた。
その夜、玄関をけると、母の古い靴がいつものようにきちんと揃えてあった。
「お帰り、由美」
居では母が、私のカーディガンの袖を縫っていた。糸を通した針を細い指でつまみ、ほつれた部分を針ずつ丁寧に直している。
「お母さん、それもう捨ててもいいのに。しいの買うから」
「もったいないわよ。まだ着られるもの」
母は笑った。
「それにこれ、由美が社会になって初めてのお料で買ってくれたでしょう」
正確には初任ではなく、最初ののボーナスだった。私は自分用のコートを買おうとしていたが、百貨で母に似いそうなカーディガンを見つけ、予定を変えてそれを買った。
母は10以経った今も、そのを捨てていなかった。
父は私が学のに病気でくなった。
それから母は、女つで私を育てた。昼はスーパーのレジ、夜は週3だけビル清掃の仕事にもた。の修学旅代も、学の入学も、私には度も「せない」と言わなかった。
私は学2の頃、度だけ退学を考えたことがある。
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夜に帰ってきた母が、玄関で靴を脱いだまま座り込み、腫れた膝を両でさすっていたからだ。
「お母さん、もう夜の仕事やめてよ。私、学辞めて働くから」
そう言った私に、母は本気でった。
「何を言ってるの。せっかく格したんでしょう」
「でも——」
「お母さんが働くのは、お母さんが決めたこと。由美が学を辞める理由にしないで」
その言葉が忘れられなかった。
社会になった、私はつだけ目標を決めた。
母が歳を取ったら、階段のないにませる。
誰かに頼らなくても病院へける所。
い買い物袋を持って4階までがらなくてもいい所。
に隙の入らない部。
そういうを、自分で用する。
私はIT関連の会社で経理の仕事に就いた。派な仕事ではないが、勤続数が増えるにつれて任される範囲も広がり、30代半ばで課代理になった。
旅は数えるほどしかしていない。
ブランド物には興がなかった。
昼はなるべく弁当を作り、でコーヒーを買う代わりに筒を持った。友からは「何のためにそんなに貯めてるの」と笑われたこともある。
その答えが、母のマンションだった。
駅から徒歩10分。
築12。
1階の2LDK。
玄関から内まで段差がなく、浴にはすりがある。徒歩圏内にスーパーと形科があり、バスもい。
初めて内見した、私は玄関にった瞬に決めた。
ここなら母は、齢をねても暮らせる。