"墓前の少女は「娘は生きてる」と言った" 第8話
「そんな昔のものが何になる」
「昔のことだけなら、そうかもしれませんね」
私はの奥へ目をやった。向かいのの窓にかりがつき、カーテンの隙からこちらを見ているがある。修司もそれに気づいたのか、しだけ声を抑えた。
「体、俺はんだなんてってなかったんだよ」
その言葉がた瞬、私はので息を止めた。
修司は続けた。
「だから毎、お義母さんのところへってたんでしょう。が来てないか、誰か尋ねてこなかったかって聞いてやった。どこかでがなくなれば、最には実へ戻るとってたんだ」
私は何も言わなかった。
7、彼が何のためにへ通っていたのか。
本が今、自分ので説していた。
「墓には?」
私が聞くと、修司はで笑った。
「きてるが墓へ帰ってくるわけないでしょう」
修司は今、墓のくでゆきを見かけたらしい。女が墓のでを置く姿を見て、その顔に若い頃の咲の面をじ、をつけてきたのだと話した。寺をたに私が見かけた提げ袋の男は、やはり修司だったのである。
「ようやく見つけたんだ。今さら逃がすわけないでしょう」
咲が私のろで震えた。
「その子は俺の血が入ってる。俺のものだ」
その言葉を聞いた瞬、胸の奥にあった恐怖が消えた。
私は背筋を伸ばした。
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「子どもは、誰のものでもありません」
修司のが止まった。
「あなたの持ち物でも、咲の持ち物でも、私の持ち物でもない。これから自分の名できていく、のです」
「ばあさんが偉そうに――」
修司がを伸ばし、私の腕をく掴んだ。
痛みがったのとほぼ同に、の奥から複数の音がづいてきた。制姿の警察官と、し遅れて初が駆けてくる。若い警察官が私の腕を掴んでいる修司をそので制止し、もうが私たちのへ入った。
「何をする。俺は夫だ。族の話をしているだけだ」
修司は叫んだ。
若い警察官は落ち着いた声で答えた。
「今のやり取りも含めて、確認させていただきます」
修司の顔から、7守ってきた「気の毒な夫」の表が消えた。
には何軒もののかりがついていた。
今度はもう、誰にも見られていない所ではなかった。
修司が警察官とともにそのをれたあと、私は玄関へ戻った。咲は畳のへ膝をついたまま、ちがれなくなっていた。私の腕には修司の指の跡が赤く残っていたが、それを見つけた娘は自分が掴まれたような顔をした。
「お母さん、ごめん」
「どうしてあなたが謝るの」
「私のせいで」
私はため息をつき、娘の隣へ座った。
「そう言うとったから、警察に相談したことを黙っていたのよ」
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咲はしばらく私を見ていた。やがて顔を覆い、声をげて泣き始めた。夜の静かな涙とは違い、7にみ込んだ分まで吐きすような泣き方だった。
私はその背を撫でながら、議なことを考えていた。咲は7、押入れの奥にと記録をしまい込んでいた。私は同じ7、茶箪笥の奥に娘の湯呑みを伏せたまま、毎埃を拭いていた。
母と娘で、やっていることはよく似ていた。
言えないものを捨てられず、いつか必になるかもしれないとってしまい込む。
そんなところまで親子なのだ。
そのの続きは、度にすべてが解決したわけではなかった。佐々先と相談しながら、咲がしていることを法に確認するための続きをめ、修司との婚姻関係を終わらせる話しいも始めた。接触を制限するための申てもわれ、玄関先での来事と、それ以の相談記録がな材料になった。
ひまりについても、専の助けを借りながら戸籍と就学に必な続きをつずつめた。7分のをで取り返すことはできなかったが、だからといって、もうたりともち止まる必はなかった。咲は役所へくたび緊張していたが、以のように途で「やっぱりやめる」とは言わなくなった。
がけ、梅が咲き始めた頃、佐々先から連絡が入った。
咲のに関する続きが認められ、戸籍の理がんだ。
婚も成した。
修司には、咲たちへ用に接触しないための措置が取られた。