"27年目、妻は食卓を捨てた" 第5話
うちにとって、事な材です」
そのの午、美子は正式な類へ署名し、しい座を与振込先として登録した。
方、松井では孝志の苛ちが限界へづいていた。
3目になっても美子から連絡がない。
族カードを止めたにもかかわらず、助けを求める話さえ来ない。
「何で困らないんだ」
孝志は何度もスマートフォンを確認した。
「ホテル代だって事代だって必なはずだろ」
彩佳は父親の言葉を聞きながら、鞄のにある雇用条件通をいしていた。今すぐ「お母さんはで活できる」と教えてやりたい気持ちもあったが、母の個な類を勝に見たことへのろめたさがあり、言いせなかった。
翌朝、加代が薬の管理をできず体調を崩したことで、孝志はさらに追い詰められた。診察券の所も、薬の名も、かかりつけ医の名さえ把握していない。これまで「母親の面倒を見ている」とっていた自分が、実際には美子へすべて丸投げしていたことを認めざるを得なかった。
それでも、孝志のプライドは残っていた。
「パート先に話する」
「何で?」
彩佳が聞くと、孝志は当然のように答えた。
「あいつを辞めさせる。仕事なんかしてるからになって戻ってこないんだ」
彩佳はを疑った。
「お父さんに、お母さんの仕事を辞めさせる権利なんてないよ」
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「夫婦なんだから庭の方が優先だろ」
孝志は聞くを持たず、施設へ話をかけた。
「松井美子の夫ですが、妻は今勤していますか」
応対した職員が佐藤へ話を替えた。
孝志は尊な調で言った。
「庭の事で、妻には今でパートを辞めてもらいます。ご迷惑をかけますが、代わりのを探してください」
話の向こうで数秒、沈黙があった。
「ご主、奥様から何も聞いていらっしゃらないんですか?」
佐藤の声だった。
「何をです?」
「松井さんは昨付で、当施設の常勤職員として正式に雇用契約を結ばれました」
孝志は言葉を失った。
佐藤はさらに続けた。
「それから申し訳ありませんが、ご族だからという理由で、本のなく退職させることはできません。むしろ私たちの方から何かもお願いして、ようやく引き受けていただいたんです」
「美子が……正社員?」
「はい。厨のを担っていただく予定です」
孝志はしわだらけのシャツを握りしめた。
佐藤の次の言は、27妻を見してきた男の自尊を、静かに打ち砕いた。
「松井さんは、うちにとって絶対に放したくないなんです」
話を切った孝志は、しばらくリビングでち尽くしていた。自分が「ただのパート」と呼んできた妻が、の世界では何かもから正社員として必とされていた。
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その事実を理解しようとしても、これまで作りげてきた妻のイメージとあまりにも違いすぎて、が追いつかなかった。
「お父さん、施設のは何て?」
彩佳が尋ねると、孝志はかすれた声で答えた。
「正社員になったそうだ」
翔太も匠も驚いた。
「母さんが?」
「何かの違いじゃないの?」
孝志も同じことを考えたかった。しかし、佐藤の言葉に迷いはなかった。美子の料理や細かな気配りは施設内で評価され、利用者からも信頼されているという。
「俺がカードを止めても……関係ないってことか」
孝志の独り言を聞き、彩佳はとうとうできなくなった。
「最初から関係なかったんだよ」
鞄から古いノートを取りし、卓へ置いた。
「何だ、それ」
「お母さんが台所にしまってたの。読んだら分かるよ」
孝志は眉をひそめながらページをいた。
そこには自分の名が何度もてきた。
《孝志さん、最胃の調子が悪い。朝はおかゆにする》
《み会続き。塩分と油を控える》
《健康診断まであと2週。しでも数値がよくなればいい》
翔太の残業、彩佳の落ち込み、匠の試験、加代の血圧。
どのページにも、族の誰かの状態と、それにわせて美子が何をしようと考えたのかがかれている。
「俺たちがべてたのって……」
翔太が呟いた。
「ただの飯じゃなかったんだ」
彩佳は涙を拭いながら頷いた。
「私たち、度も見ようとしなかった。お母さんは毎全員のこと見てたのに」