"27年目、妻は食卓を捨てた" 第4話
血圧のためだけれど説しても聞いてもらえない》
《孝志さんに「おはにいて楽でいい」と言われた。仕事から帰ったばかりだったので、ししかった》
そして3か。
《由美子姉さんに相談した。もし本当に限界になったら、しばらく泊めてもらう》
彩佳はそこでを止めた。
母は突然をたのではない。
何かもから、限界をじていた。
それなのに、同じにいた誰も気づかなかった。
さらに先のページには、施設の責任者から正社員登用の話を受けたことがかれていた。
《佐藤さんから常勤で働かないかと言われた。嬉しかった。でも孝志さんに話したら、「今さら正社員になって何になる」と笑われる気がして言えなかった》
《自分で活できる収入があれば、をる選択もできる。怖いけれど、度きりのだから考えてみたい》
彩佳は鞄から、ノートと緒に落ちていた類を取りした。
それは正式な雇用条件通だった。
与、勤務、社会保険。
母が活するには分な条件が記されている。
しかも返答期限は、今だった。
「お母さん……」
父は今頃、族カードを止めれば母が戻ると信じている。
けれど母は、そのことを予していたかのように、しい自分名義の座まで用していた。
彩佳は震えるで最の数ページをめくった。
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そこにはい文があった。
《もしこの話を受けることができたら、私はもう「誰かに養ってもらう」ではない》
彩佳の胸がく締めつけられた。
母が今、施設へどんな返事をするつもりなのか。
そして、もし正社員になるつもりなら。
母は最初から、このへ戻る気などなかったのではないか。
その頃、美子は姉・由美子のマンションで朝の片づけを終え、静かにスマートフォンを見ていた。
孝志から届いたメッセージには、《カードを止めた》《謝れば許す》とかれている。
由美子は画面を覗き込み、呆れたように眉を寄せた。
「まだあなたがおがなくて困ってるとってるの?」
「そうみたい」
美子は苦笑した。
以なら、この言葉を読んだだけで胸が縮みがっただろう。「誰のおかげでべていけるんだ」と言われるたび、自分はではきられないなのだとしずつい込まされてきた。
けれど今は違う。
美子は計を見た。
午10半。
今は施設の佐藤へ、返事をすると約束している。
「お姉ちゃん、ってくるね」
「うん」
「今、ちゃんと自分で決めてくる」
由美子は何も助言せず、妹の背を軽く押した。
美子は玄関をた。
バッグのには、しく作った通帳と印鑑が入っていた。
介護施設の厨へ入ると、美子はいつものへ着替えた。
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きな鍋では昆布と鰹節の汁が取られ、根や参がゆっくりにかけられている。庭と違い度に何分もの事を作る職だが、美子はこの所にっている、議と疲れをじなかった。
「松井さん、今のお噌汁もいいりね」
同僚の女性が笑った。
「しえるから、根菜をめにしてみたの。み込みにくい方の分は、で柔らかく調するわね」
その会話を聞いていた施設の佐藤が、休憩になると美子へ声をかけた。
「先お話しした常勤職員の件ですが、そろそろお返事をいただけますか」
美子は背筋を伸ばした。
1かから何度も頼まれていた。調理師免許を持つ職員の補助から始めたものの、美子は利用者の体調や嚥状態をよく観察し、同じ献でもべるにわせて細かく調できた。その気配りが厨内だけでなく、護職員や利用者からもく評価されていた。
「私でよろしければ、ぜひお願いします」
佐藤の顔がるくなった。
「本当ですか。ありがとうございます。松井さんならして厨を任せられます」
その言葉を聞いた瞬、美子は胸の奥がくなった。
では誰にも見てもらえなかったことを、ではこんなにもまっすぐ評価してくれるがいる。
「こちらこそ、必としてくださってありがとうございます」
をげると、佐藤はし驚いたような顔をした。
「必どころじゃありませんよ。利用者さんのには、『松井さんの噌汁をむとほっとする』と言ってくださる方もいます。