"最終列車で消えた18歳" 第3話
直が学を迷うと、信は言った。
「おは美紀のように、族を捨てる子にはなるな」
直は姉に会ったことがない。
それでも、自分のが常にの姉と比べられていることだけは分かった。
やがて直はを卒業し、町役へ就職した。信のもとをれず、老の活も支えた。
美紀は戻らなかった。
202212、信は92歳でくなった。
最まで枕元には、美紀の尋ねの写真が置かれていた。
翌、廃線から35を迎えた旧杉駅の解体事が始まった。域資料館として部を残す計画もあったが、根と柱の腐がみ、保は難しいと判断された。
待の伝言板を取りした作業員が、壁との隙からい鉄箱を見つけた。
に入っていたのは、美紀の受験票、古い券、12通の、診断、預通帳、録音テープだった。
受験票の裏側には、昭6344の付で、学職員の文字が残されていた。
《本来。入学辞退のなし》
美紀は失踪、青葉期学を訪れていた。
それなのに2、信の署名がある入学辞退届が提されていた。
直は、旧駅から見つかった鉄箱をにして言葉を失った。
美紀の受験票には、卒業の写真が貼られていた。顔ちは若いころの信に似ており、目元だけはくなった文にそっくりだった。
鉄箱から見つかった券は、昭63327、杉駅発の最終列の乗券だった。
広告
線廃止を記して作られた特別な切符ではなく、駅の窓で販売された通常の切符だった。裏には美紀の名が鉛でかれている。
しかし改札鋏の痕がなかった。
当、杉駅から列に乗るには、信か別の駅員が券に鋏を入れた。未使用の切符が鉄箱に残っているなら、美紀は改札を通っていない能性がある。
直は澄に連絡した。
75歳になった澄は、退職も町で暮らしていた。受験票を見ると、子へ座ったままく黙り込んだ。
「美紀さんは、列に乗っていなかったのかもしれません」
「でも父は、姉が乗るところを見たと言っていました」
「信さんが見たのは、赤いマフラーだったのでしょう」
2は町の資料館に保管されていた聞写真や個撮の8ミリ映像を調べた。
最終列の発面を撮した映像は、画質が悪く、乗客の顔もはっきりしない。それでも赤いマフラーを巻いた女のきを追うことはできた。
女は美紀よりし背がかった。
旅鞄を持つには、い袋をはめている。美紀は発当の写真で、袋をつけていなかった。
澄はの卒業アルバムをき、同級の顔を確認した。
「この子です」
川原苗。
美紀と同じクラスで、片倉製糸に勤める母と2で暮らしていた。卒業は名古の料品へ就職する予定だった。
広告
苗は現、滋賀県内にんでいた。
直と澄が訪ねると、苗は最初、美紀の失踪について何もらないと答えた。しかし最終列の映像を見せると、膝ので両を握った。
「列に乗ったのは、私です」
発当の夕方、美紀は苗へ赤いマフラーと旅鞄を渡した。勢のが集まる混乱の、自分の代わりに列へ乗ってほしいと頼んだという。
苗は2つ先の無駅でり、母親のが運転するで名古へ向かった。旅鞄とマフラーは内へ残した。
「父宛てのも、あなたが置いたんですか」
「美紀に頼まれました。お父さんが追ってこないようにするためだと聞きました」
「美紀さんは、どこにいたんですか」
「駅の旧貨物です。最終列がたあと、別ので町をることになっていました」
鷺線には、かつて材や繭を積み込む貨物施設があった。線廃止には使われなくなっていたが、駅の裏から倉庫へ続く通は残っていた。
美紀は送別の混みに紛れて貨物へ入り、列が発するまで隠れていた。
その、片倉製糸の古いトラックで名古へ向かった。
運転していたのは、信の妹である片桐久美子だった。
久美子は美紀の失踪から5に病気でくなっている。彼女の自宅はすでに取り壊され、残された品の部分も処分されていた。