"50件のSOSと愛人親子に回した救助車" 第19話
そして、リゾート滞費のうち個に使用した分については、返済のがあると表した。
武史は1度だけ、彼女に会いにった。
していたからではない。
なぜ自分を騙したのか、その理由を直接聞きたかったからだ。
里奈はホテルのラウンジの窓際に座っていた。
武史を見るなり、彼女はこう言った。
「蒼太のでは何も話さないで」
武史は向かいの席に座ることもなく、ったまま尋ねた。
「最初からってたのか」
里奈は彼を見つめた。
「蒼太を、自分の子かもしれないとっていたことも?」
里奈はしだけ黙った。
「ってたわ」
「なのに黙ってたのか」
「あなただって、はっきりとは聞かなかったじゃない」
武史は乾いた笑いを漏らした。
「俺が聞きたい答えを待っていたとでも言うのか」
里奈は彼の顔を真っ直ぐに見つめ返した。
「そうよ。そして私はそれを利用した。それは私の過ちだわ」
予のあっさりとした肯定に、武史は瞬言葉を失った。
しかし里奈はすぐにこう付け加えた。
「でも、奥さんからの話を拒否したのはあなたよ。救助を呼んだのもあなた。その責任まで私に押し付けないで」
武史は何も言い返せなかった。
自分が最も聞きたくなかった言葉だったが、そこには1つも違ったことはなかったからだ。
彼は里奈を憎めば、しは楽になれるとっていた。
広告
全ての原因を彼女の嘘のせいにすれば、勇気を失った理由も単純なものになる気がしていた。
だが、真実は違った。
里奈は嘘を利用し、自分はその嘘を信じたいから信じた。
そしてその決断は、いつだって自分自のでしてきたのだ。
が過ぎ、が来ても、幸恵は勇気の部をそのままにしていた。
最初は、何つ触れることができなかった。
しかしある、彼女は1で部のドアをけ、本やおもちゃを1つずつ理し始めた。
捨てるためではない。
勇気が使っていたものを、必としているの子供たちに譲るためだった。
だが、あの青いミニカーだけは、どうしても箱に入れることができなかった。
勇気が切そうにリュックに入れていたものだった。
そのミニカーをに取った途端、いの声が元で蘇った。
『ママ、これパパに見せるんだ』
幸恵はついにそのに座り込み、声をげて泣いた。
その初めて、彼女は自分自の罪悪と正面から向きった。
どうしてあの荘へってしまったのだろう。
どうしてもっとく婚しなかったのだろう。
どうしてあの子に、パパは優しいだなんて嘘を言い続けてしまったのだろう。
のでは、終わりのない『もしも』が繰り返される。
田弁護士に紹介されたカウンセラーは言った。
「どんな選択をしても、過は変えられません」
広告
幸恵はい、言葉を受け入れられずにいた。
そんなある、彼女は勇気が残した学の連絡ノートを見つけた。
そこに、たどたどしい文字でこうかれていた。
『ママは、僕が病気の、夜全然寝ないでそばにいてくれる』
そのたった文ので、幸恵は再び崩れ落ちた。
自分は完璧な母親ではなかったかもしれない。
でも最の瞬まで、あの子を諦めなかった。
その事実だけは、初めて自分自で認めてあげることができた。
そのを境に、幸恵は武史の過ちと自分の悔を、もう同じ秤に乗せるのをやめた。
1が過ぎ、京に再びがる季節がやってきた。
勇気の1周忌を控え、武史は田弁護士を通じて霊園への訪問を尋ねてきた。
幸恵の返答はいものだった。
「同じ帯には来ないで欲しい」
武史は再度懇願した。
「くからでもいい、しだけ見させて欲しい」
幸恵は今度は何も答えなかった。
1周忌の朝、彼女は勇気が好きだった季節のと、あの青いミニカーをに郊の霊園へと向かった。
細かいが静かにい落ち、遊歩沿いの々の枝にく積もっている。
霊園の入りに到着した、顔見りの警備員がづいてきて声で言った。
「先ほど、川武史さんがいらっしゃいました」
幸恵のが止まる。
「には入れないで欲しいとお願いしていたですが……」
警備員は申し訳なさそうに言った。
「ええ。ですから、のでずっとお待ちになられていますよ」