"祭り食堂の逆襲" 第5話
彼らは皆、静かに、だが温かい笑顔を浮かべて席に着いていく。
座敷の番奥の隅の席で、夕方のあの男性が、された角煮を美しそうにに運びながら、ふと井を見げた。
彼の線の先には、台でできたあの痛ましい漏りのシミがあった。男性は目を細めてそのシミを見つめたが、それだけで誰にも何も言わなかった。
「おかわり!」「こっちもご飯お願い!」
威勢の良い声がび交い、角煮の鍋も、巨なお櫃に入った炊き込みご飯も、丁寧に盛り付けられた鉢も、次々に空っぽになっていった。
朝から丹精込めて用した50分の料理が、つ残らず綺麗に彼らの胃袋へと消えていった。
宴が終わり、最にあの男性がレジのにった。
けい子は何度もをげながらお釣りをした。
「本当に、本当にありがとうございました。何とお礼を申しげたらいいか……」
男性は、名も、どこの会社のかも名乗らず、ただし照れたように微笑んだ。
「ご馳様でした。とても美しかったです」
それだけ言うと、彼は仲たちと共に静かにをていった。
けい子と健太は、彼らの背が見えなくなるまで、何度も何度もをげ続けた。
翌週。
岩田は、港の再発現へとを運んだ。
駅の規模な再発事業。総額100億円という巨プロジェクトだ。の入札において、建設はすでにこの案件の受注が実質に内定していた。
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ただし、正式に契約を結ぶには、が提示した絶対条件がつあった。
「この方で確かな施実績のある元企業と、共同企業体(JV)を組むこと」
京から来た建設のこの支には、まだ元での信頼と実績が圧倒にしていたのだ。
羽の矢がった相は「柏建設」。社員80名を抱える、元では信頼のい堅ゼネコンだ。
その提携の話は、部のトップ会談のレベルでんでおり、現の主任である岩田は詳しいまでらされていなかった。
岩田は、オーダーメイドの革靴で現のを踏みながら、内でで笑っていた。
(方のさな建と組む段取りなど、誰がやっても同じことだ。俺が仕切ってやるよ)
現事務所のに差し掛かると、軽トラックが1台、無造作にまっていた。
通を半分塞ぐような位置にまっており、荷台のには広げられた図面がに煽られている。その脇で、作業着姿の男が真剣な顔で図面を覗き込んでいた。
焼けした逞しい首筋。紺の作業着の胸には社名の刺繍が入っているが、岩田はそんなものに興はなく、わざわざ読もうともしなかった。
(どうせ、請けのしがない職だろう)
岩田はを止め、骨に嫌な顔を作った。
「ちょっと。そこ、通れないんだけど」
男は声に気づいて図面を畳み、静かに脇へ寄った。
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「失礼しました」
男がをげたのを見て、岩田はさらに態度をきくした。彼は自分の革靴の先にうっすらと埃がついたのを見て、げさに顔をしかめた。
「あのさ、この現って、なんでこんな古臭いやり方してんの? うちの現だともっと最の械入れて、効率にやるけどね」
男は、広げ直そうとしていた図面からゆっくりと目をげた。その瞳は静かで、いのように波っていなかった。
「盤の関係で、この法が番全なんです。をかけてでも、確実にやる必があります」
岩田は嘲笑した。
「そう。まあ、素にはわかんないだろうけど、京の本社のが見たらなんて言うかねぇ」
岩田は、これ見よがしに首の級腕計を見るふりをして、さらに言葉を続けた。
「言っとくけどさ。元の建設なんてのはね、うちみたいなが『選んでやってる』なんだよ。分かってる? うちが言『と組む』って言えば、おらの仕事は終わりなんだから。しはわきまえろよ」
男は、岩田の顔をしばらく黙って見つめていた。るでもなく、怯えるでもない。ただ、岩田というの底の浅さを測るような、静かな線だった。
やがて、男はく答えた。
「そうですか」
男はそれだけ言って、再び図面に目を落とした。
岩田は「チッ」と舌打ちをし、男の名すら聞かずにそのを歩きった。