"義父を八年看取った夜、手切れ金は三万円" 第14話
、私がこの男のでどれだけ涙を流しても、度として向けられなかった謝罪の言葉。
それが今、自分のが破滅に瀕した瞬、これほどまでにっぺらく、汚らしく吐きされている。
私は、すがりついてくる修のを、ややかに見ろした。
そして、歩、ろへとを引いた。
男の指先が空を切り、畳を虚しく引っ掻く。
「修さん」
私の声には、りすらこもっていなかった。 ただ、どこまでも澄み切った、絶対な拒絶だった。
「お義父さんのオムツを替えていた、お義父さんはいつも、かないで私のを握りしめて、泣いていらっしゃいました。
『すまない、すまない』と、声にならない声で謝り続けていらっしゃいました」
私は、自分の赤く荒れた両を胸のに掲げた。
「このはね、お義父さんの尊厳を守るために荒れたです。
あなたのような、実の父親をづるにし、連れ添った妻をゴミのように捨てようとしたのために、差しす慈は……ミリたりとも残っていません」
の引き戸がき、の制警察官が入ってきた。
「修だな。殺未遂および業務横領の容疑で、任同を求める」
警察官のが、修の両腕を掴んだ。
「敏子ぉぉぉッ! 敏子! 頼む! 捨てないでくれぇぇッ!」
引きずられていく修の絶叫が、の朝の宅に霊した。
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扉のには、パトカーの赤灯が静かに回転していた。 所の民たちが巻きに集まり、かつて「親孝なエリート部」として町内会の名士ぶっていた男が、錠をかけられてパトカーの部座席に押し込まれる景を、息を呑んで見つめていた。
パトカーがり、子と健が々の体で逃げった。
古い敷には、完全な静寂が戻ってきた。
私は、居の座卓のに正座していた。
座卓のには、桐原弁護士が置いていった遺産目録と、源造の古いカセットテープ。
そして、私がき続けた、冊の介護誌。
障子をけ放つと、の柔らかな陽が、埃のう畳の部をかく照らしした。
庭の隅にある梅の古に、さない蕾がつ、ほころんでいた。
。 かった、私のが終わったのだ。
それから、が過ぎた。
季節は巡り、葉が鮮やかにづくの午。
かつての苦しい空気が澱んでいた、あの古い本は、見違えるような姿へとまれ変わっていた。
玄関の引き戸は、子でも楽に入りができる最のバリアフリーの引き戸に替えられ、い塀は取り払われて、誰でも気軽にち寄れる放な庭が広がっている。
玄関の板には、真しいヒノキの板に、私のきの文字が彫られていた。
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『域齢者デイケアサロン ひだまりの』
源造が遺してくれた広なと敷、そして裏座に残されていた数千万円の資産のすべてを使い、私はこのを、独居老や介護に悩む族が無償で集えるデイサービス施設へと改装したのだった。
居だった広では、所のお寄りたちが座になり、温かいほうじ茶をみながら笑い声をげている。
「敏子さん、今のお噌汁も美しいわねえ」
「ありがとうございます。汁から丁寧に取ったんですよ」
私はエプロン姿で、お寄りたちに湯呑みを配りながら、穏やかな笑みを浮かべた。
私のは、今も事と介護で荒れている。 だが、そのひび割れは、かつてのような「屈辱と絶望の証」ではなかった。 自分のでち、自分の志で誰かを支えているという、誇りの証だった。
夕方、利用者の送迎を終えた。
私は、庭に面した縁側に腰をろし、湯気のつお茶をすすった。
元にあるスマートフォンの画面には、桐原弁護士から届いた、定期報告のメールが表示されていた。
修の裁判は、結審した。
殺未遂の罪は免れたものの、期にわたる悪質な業務横領、尊属遺棄、ならびに詐欺未遂の罪により、懲役の実刑判決が確定し、現も刑務所に収監されている。
所したとしても、退職はゼロ、築きげたキャリアも社会信用も完全に消滅し、待っているのは元引受もいない孤独な極貧活だけだ。