みかん小説
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"毎月100円を振り込む名医の20年" 第2話

科者。 その単語が落ちた瞬、父の肩が、ピクリと微かにねた。 だが、父は顔をげなかった。 ただ、膝のの節くれったを、さらにく握りしめただけだった。

「院、それは……」

「席をちましょう、あなた。もう分ですわ」

恵子は伝票にすらを触れず、優雅にがった。 綾乃もまた、私と線をわせないまま、形のように母のに続いた。 り際、仁が私を瞥し、く吐き捨てた。

「娘との婚約は、なかったことにしてもらいたい。連絡先も消しなさい。……度と、々の活圏にづかないでくれ」

ファミレスの自ドアが閉する子音が鳴り、の姿が初差しのへと消えていった。

テーブルに残されたのは、押し戻されたい封筒と、氷の溶けきったつのグラス。 そして、恵子が執拗に拭いたせいでく毛羽った、アルコールの匂いだけだった。

「……父さん」

私が声をかけると、父はゆっくりとげた。 泣いてはいなかった。ってもいなかった。 ただ、どこか所を見るような、く濁った瞳で、私を見て力なく笑った。

「すまんな、拓。……わしのせいで、ええ話が流れてもうたな」

その乾いた笑顔を見た瞬、私の胸の奥で、何かが音をてて千切れた。 悔しさで界が歪み、奥歯が砕けるほど噛みしめた。 なぜ言い返さないのか。

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なぜ、あんな連で踏みにじられて、謝るのが父の側なのか。

「帰ろう、父さん。……あんな奴ら、こっちから願いげだ」

私は伝票を掴み、レジへ向かった。 千円札を枚叩きつけるように支払い、自ドアをると、アスファルトの照り返しが容赦なく目を焼いた。

角に、父の乗ってきた平成式の軽トラック――スバル・サンバーがまっていた。 かったはずの塗装はチョーキングを起こしてを吹き、荷台のあおりは無数の傷と赤錆で覆われている。 アイドリングの音は規則で、マフラーからは微かに煙ががっていた。

このボロが、私の幼期からのすべてだった。 母がくに病気で倒れ、莫な医療費を残して逝った、父はこの軽トラの荷台に私を乗せ、町の段ボールを拾い集めて私を育てたのだ。

「拓、おで帰るか?」

「……乗せてってくれよ。助席、空いてんだろ」

父はし驚いたように眉をげ、それから「そうか」とだけ言って運転席に乗り込んだ。

内は、エアコンがとうに壊れていた。 窓を全にしても、と、シートの奥からる古の埃の匂いが充満する。 助席のスプリングは完全にへたっており、座るとお尻が底板に当たるような鈍い触があった。

、父は言も喋らなかった。 ただ、両で油染みのついたハンドルを握り、キロで線をり続けた。

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横を追い越していく真しいセダンやミニバンが、苛たしげにエンジン音を響かせていく。

を超える町の造平に着いたのは、夕方のを回った頃だった。 父はりると、腰をトントンと叩きながら言った。

「拓、すまんが、のゴミをし片付けてくれんか。の朝、いんや」

「……分かったよ」

父は引き戸をガラガラとけ、暗い玄関の奥へと消えていった。 残された私は、に照らされた軽トラの助席のドアをけた。

ダッシュボードのには、埃をかぶった伝票の束、使い古しの軍、コンビニの湿気たおしぼり。 それらをビニール袋に放り込みながら、私は昼の屈辱を反芻していた。 崎仁のえ切った目。 恵子の、汚物を見るような仕。 そして、何も言えずに俯いていた綾乃。

(クソッ……)

りに任せて、助席の座面をく叩いた。 その拍子に、シートの破れ目から、黄く劣化したウレタンフォームのがボロボロとこぼれ落ちた。

「あ……」

叩いた所のすぐ、座面と背もたれのい隙に、何かが挟まっているのが見えた。 古回収の伝票の切れ端か何かだとった。 指を突っ込み、引っ張りそうとする。 だが、それは切れではなく、ビニールに包まれたい冊子のような触だった。

スプリングの鉄線に引っかかり、なかなか抜けない。

指先を黒く汚しながら、力任せに引き抜いた。

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