"私の命を八千万円にした夫の末路" 第2話
夕飯の支度を急ぐ常のざわめき。
そのすべてが、まるでい異世界の来事のように、急速にを失っていく。
私の命に、千万円。
そして、事故が起きたの全権を、夫である修がで独占するという、の削り取られた。
ガタガタと、膝の震えが止まらなかった。
内の、古いエアコンの吹きしから、埃っぽい温が私の顔を撫でる。 その臭いすら、急に耐えがたいものにえた。
私は震えるで枚のを元のビニール袋に戻し、バッグの底、帳のカバーの隙にく押し込んだ。
急いで帰らなければならない。 までに戻らなければ、また義母の罵声がぶ。
震えるでアクセルを踏み込んだ。 古びた軽自のエンジンが、苦しげな唸り声をあげた。
◇
「遅いわよ、真由さん!」
築、世田の宅の端にある造階建ての佐伯。 玄関の引き戸をけた瞬、廊の奥から鋭い声がんできた。
義母のだ。 エプロンをきつく締め、腕を組んで仁王ちしている。
「すみません、お義母さん。スーパーのレジがし混んでいて……」
「言い訳はいいのよ。これだから実のしつけがなってない娘は困るわ。うちの修がでどれだけ神経をすり減らして働いてるか、しは考えたことがあるの?」
「……はい。申し訳ありません」
私は玄関のに正座するようにして、をげた。
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結婚して。 これが、私の常だった。
修と会った、彼は堅の属加会社の跡取り息子だった。 「母さんはしうるさいけれど、悪気はないんだ。真由の控えめなところを気に入るはずだよ」 そう言ってプロポーズしてくれた。
だが、現実は違った。
私の実は、方でさな文具を営む普通の平民庭。 方の佐伯は、昔はこのあたりの主だったというプライドだけが肥化しただった。
嫁いだ初から、私は「持参もろくに持ってこない貧乏嫁」として扱われた。
さらに、結婚してが過ぎた頃、修の会社が取引先の倒産に巻き込まれ、数千万円の焦げ付きを作った。 それ以来、の空気は変した。
『あんたが疫病神だからよ! うちの運気ががったのは、貧乏くさいあんたがのこのこがり込んできたせいだわ!』
は毎のように私を鳴りつけた。 昼は所の総菜で揚げ物のパート、夜は内職のビーズアクセサリー作り。 私の稼ぎはすべて、佐伯の「借返済」という名目で、の管理する座に吸い込まれていく。
それでも、子供さえできれば、いつか族として認めてもらえるはずだと信じていた。 だが、その願いすら叶わなかった。 妊治療の費用など、してもらえるはずもなかった。
「ほら、突っってないでく夕飯の準備をしなさい。
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今はレナも来るんだから」
がを鳴らしてリビングへと戻っていく。
レナ。 修の妹で、私の姑だ。
所にむ輸入雑貨のバイヤーと結婚したはずだが、週には実に転がり込んできては、蔵庫の料を漁り、私をこき使っていく。
私は台所にち、買ってきたばかりのい豚肉と根を取りした。
包丁を握るが、まだかすかに震えている。
バッグのにある、あの千万円の証券。 そして、私の指紋が押された。
……あれは、何かの違いじゃないのか。
参の皮を剥きながら、必に自分に言い聞かせようとする。 修は、し頼りないところはあるけれど、暴力なんて振るったことはない。 私のではいつも、申し訳なさそうに眉をげていた。
『真由、母さんが辛く当たってごめんな。俺がもっとしっかり稼げていれば、こんないさせずに済むのに』
夜、だけの寝で、彼はそう言って私のを握ってくれたはずだ。
あの夫が。 私を、事故に見せかけて……?
そんなの、サスペンスドラマの見過ぎだ。 きっと何か、会社の融資を受けるための担保として、形骸な保険をかけただけなんじゃないか。 そう、きっとそうだ。
トントントン、と。 まな板を叩く規則正しい音に紛れ込ませるように、黒い疑を無理やりの底へと押し込めた。
ガラガラ、と玄関の戸がく音がした。
「ただいまー! ママ、お腹空いた!」
甲い、に障る声。