"10年逃亡した父の未開封400万" 第14話
直径メートルほどの、丸いコンクリートの蓋。 かつて団全体の汚を処理していた、旧浄化槽の跡だ。 その表面は、から流し込まれた粗いモルタルで分く固められ、苔がえ、黒ずんでいた。
の。 母が買った、袋の消。 そして、方メートルの。
父は、このたいコンクリートの底で、骨すら溶かされるような業に焼かれ、眠り続けていたのだ。
「来たね、真由美ちゃん」
背から、湿った声がした。
振り返ると、むらの向こうから、黄い羽を着た植田が歩みてくるところだった。 には、先が鋭利に尖ったいツルハシと、品のバールが握られている。 羽のフードの奥で、赤く濁った目が獲物を品定めするようにっていた。
「通りだ。、」
植田はツルハシの刃先を、コンクリートの面にカツンと落とした。
「リュックをこっちへ渡しなさい。それで終わりだ。全部、この穴のに放り込んで、の朝番で業者のに踏み潰させる。そうすれば、おの母親の秘密も、全部綺麗さっぱりに還る」
「……お母さんの秘密?」
私はリュックの肩紐をく握りしめた。 がまり、たい滴が髪を濡らして界を歪ませる。
「植田さん。お母さんは、ぬ際まであなたのことを呪ってましたよ」
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植田の眉が、わずかにピクリとねた。
「……何?」
「病で、識が朦朧としながら、何度も言ってました。『植田が私を脅して、健さんを殺させた』って」
「嘘をつくな!」
植田の声が荒くなった。 音をかき消すような声。
「あの女が……澄子が俺を脅したんだ! あいつはがおかしかった! 健が施設へくと言いしただけで発狂して、炉であいつのを叩き割りやがった! 俺が駆けつけたには、もう健は息をしてなかったんだ!」
私はスマートフォンをポケットので握りしめながら、歩も引かずに植田を見据えた。
「じゃあ、なぜ警察を呼ばなかったの」
「呼べるわけがないだろうが!」
植田はツルハシの柄を軋ませ、唾をばした。
「あの女は俺のみを握ってた! 町内会の修繕積に俺がを付けてたことを、なぜかってたんだ! 伝わなければ横領と殺の両方でおを警察に突きすって、血まみれの部で笑いながら言ったんだよ!」
植田の呼吸が荒く乱れ、胸元が激しくする。 、誰にも吐きせなかった膿が、堤防を決壊させたのように溢れしていた。
「健のの義をしたのは澄子だ。『がないなら、くへ逃げたように偽装しなきゃいけないから、靴だけは残す』ってな。あいつはな、自分の夫の体から、血で汚れた靴を脱がせて、わざわざ品の靴を履かせたんだよ……『真由美が帰ってきた、変にわれないように』ってな!」
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吐き気が、胃の底からせりがってきた。 母が毎、磨きで踵をすり減らしていた、あの男物の靴。 母は、父を殺したあの夜の儀式を、、毎毎、繰り返していたのだ。
「消を撒いてを流し込んだのも澄子だ! 俺はただ、軽トラで運んで、このマンホールのに落としただけだ! あの女は悪魔だよ! ぬまで俺を縛り付けて、町内のみんなのじゃ『な未』を気取りやがって……!」
「だからって……!」
私の叫びが、の団に響き渡った。
「父さんを……無実の父さんを、も棒にして、殺しにして、私にどんな顔できていけって言ったのよ!!」
植田は元を歪め、笑を浮かべた。
「きてただろうが、真由美ちゃん。あんたが学を退しようが、結婚が破談になろうが、きてるじゃないか。だがな、これがバレたら、俺のは終わりなんだよ。俺には孫もいる、この町でのもあるんだ」
植田が歩、を踏みした。 ツルハシが、をねげる。
「そのリュックを寄越しなさい。テープも、靴も、証もだ。拒むなら……あんたも、お父さんと同じ所に入れてやる。の朝には、が何トンものコンクリートを流し込むんだ。増えたところで、誰も気づきはしない」
男の目が、完全に据わっていた。 もはや説得の余などなかった。 保と恐怖に狂った老が、かつて父を沈めた同じ穴ので、今度は私を消そうとしている。