"10年逃亡した父の未開封400万" 第9話
私はえ切ったポテトを無理やり喉に押し込み、乾かないのまま、始发电のホームへと向かった。
架の商は、シャッター通りの体を成していた。
『音羽無線』の板は、錆びたトタンの庇ので傾いていた。 ガラス戸の奥には、積みにされた真空管テレビ、埃を被ったオープンリールデッキ、配線コードの束が無秩序に転がっている。
分。 サンダルを引きずりながら、背の丸まった老がシャッターをガラガラと押しげた。
「……すいません」
私が声をかけると、老はい老鏡の奥から、充血した目で私をからまで眺めた。
「まだ準備だよ」
「マイクロカセットの再を探しているんです。どうしても、今に聴かなければならないテープがあって……」
老はを鳴らした。
「マイクロ? 留守番話か昔のボイスレコーダーの規格だな。もう部品もねえよ。く完品なんて、うちにも台あるかどうかだ」
「いくらでも払います。くだけでいいんです。お願いですから、探してください」
私の切迫した表に気圧されたのか、老は舌打ちをしながらの奥へと消えた。
奥から、属やプラスチックがぶつかりうガサゴソという音が聞こえる。 待っているあいだの分、私はのをる軽トラックのエンジン音に、いちいち肩をねさせていた。
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植田の軽トラが、角を曲がって現れるのではないかという恐怖が、網膜に焼き付いてれない。
「……ほらよ」
老がカウンターに置いたのは、のひらサイズの、の塗装が剥げかけたサンヨー製のレコーダーだった。 ボタンの文字はかすれ、池のフタにはテープが貼られている。
「ベルトが伸びてたから、今しいゴムに掛け替えた。ヘッドもアルコールで磨いたが、テープ自体の磁性がきてるかどうかはらんぞ」
「ありがとうございます……!」
提示された千円を震えるで支払い、私はポケットからあのカセットテープを取りした。
老が眉をひそめて、テープのラベルを覗き込んだ。
「おいおい、ひでえカビだな。のか? 無理に送りや巻き戻しをするなよ。テープがブチッと千切れたら、度と聴けなくなるからな」
「はい……」
「試聴していくかい? イヤホン貸してやるよ」
老が差ししてくれた、古めかしい片用のモノラルイヤホン。 私はそれを受け取り、ジャックに差し込んだ。
カセットホルダーのイジェクトボタンを押す。 カチャリとさな音をてていたスペースに、母の文字で【絶対に許さない】とかれたテープを装填した。
フタを閉じる。
親指が、再ボタンのに乗った。
押せば、もう引き返せない。 私が信じてきた、父への憎しみと、母へのれみのすべてが、覆るかもしれない。
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私は呼吸をし、プラスチックのボタンを奥まで押し込んだ。
ジジ……ジジジッ……。
イヤホンから、激しいホワイトノイズが鼓膜を擦った。 古いゴムベルトが空回りするような、キュルキュルという械音が続き、やがて——。
『……おい、澄子。頼むから、返してくれ』
父の声だった。
ぶりに聴く、しくて、訛りの混ざった父の声。 事故のよりもひどく掠れていて、痛みに耐えるような湿り気があった。
『これは、俺ののだ。会社が……俺が歩けなくなった代わりにくれたなんだ。なんでおが握ってさないんだよ』
激しいの音が、背景でゴオゴオと唸りをげていた。 窓を叩く突の音。 違いなく、のあの台の夜の録音だった。
続いて、ヒステリックに甲く裏返った声が、イヤホンをつんざいた。
『あなたの? 笑わせないでよ!』
母だった。 私が度も聞いたことのない、獲物を引き裂くような獰猛な声だった。
『この、誰があなたをわせてきたとってんの!? でパチンコばっかりって、挙句の果てにクレーンから落ちて切断? 恥ずかしい! 町内のみんなが私をれみの目で見てるのよ!』
『澄子、声を落とせ……真由美が帰ってくる』
『真由美の名をさないで! あの子の学費だって、私の実が面したんじゃない! この百万円はね、私のをドブに捨てさせたあんたからの慰謝料よ! 円たりとも渡すもんですか!』