"10年逃亡した父の未開封400万" 第7話
そして、今夜に、あの全靴ごと、すべてを回収し、どこかへ処分するつもりなのだ。
窓のを見ると、団の駐に、台の軽トラックが入ってくるのが見えた。 ヘッドライトを消し、静かに、まるで獲物を追い詰めるように、4号棟の真に滑り込んでくる体。
運転席からりてきたは、見げるようにして、この402号の窓をじっと見つめていた。
灯の青いに照らされたその顔は、紛れもなく、植田だった。
彼のには、バールのようない鉄の棒が握られていた。
カン、カン、カン。
階段をがってくる、たい属音が団の静寂を裂いた。
段がるごとに、鉄骨が鈍く震える。 その取りは急いではいない。 逃げのない獲物を確実に追い詰めるような、規則正しく、粘りつくような歩音。
階の踊りを通過した。 次が、階だ。
私は息を止め、玄関のたたきにしゃがみ込んだ。 臓が肋骨の内側を激しく乱打し、喉の奥から酸っぱいものがせりがってくる。
あと秒もしないうちに、植田がこのドアのにつ。 彼のにはバールがあり、ポケットにはなぜかこの部の鍵がある。
見つかれば、すべて奪われる。 父の靴も、百万円の証も、砕けた真珠も、あのカセットテープも。 そして何より、母が守り抜いた「嘘」の正体を暴く会を、永に失う。
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逃げなければならない。 だが、玄関のには植田がいる。ここは階だ。
私は部の隅にあった、丈夫な黒のナイロン製リュックサックを掴み取った。 母がパートのき帰りに背負っていた、汚れた型のリュックだ。
震えるで、・センチの全靴を押し込む。 化した革が軋み、ずっしりとした異様なみがリュックの底に沈む。 その隙に、ビニールに包んだ百万円の定額貯証、砕けたパールのピアス、そして仏壇の奥から引きずりしたマイクロカセットテープを滑り込ませた。
の計簿もだ。 消と料の異常な数字が記された、あの青いインクのページ。
チャックを閉めた瞬、玄関ドアの真んで音が止まった。
の空気が、ピタリと淀む気配がした。
ジャラリ。
鍵の束が擦れう音が、いスチールドアを隔てたすぐ向こうから響いた。
「真由美ちゃん」
植田の声だった。 ドアの鉄板にを密着させて囁いているかのように、湿り気を帯びていた。
「起きているね。灯のスイッチの隙から、青いが見えているよ」
スマートフォンの液晶のだ。 私は慌てて画面を伏せ、リュックを両肩に背負った。 い。キロい鉄塊を背負わされているかのように、肩紐が鎖骨にい込む。
カチャリ。
鍵穴に、鍵が差し込まれる触が伝わってきた。
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ゆっくりと、属のシリンダーが回る。
——く。
私は振り返り、奥のへと音をてずにった。 靴越しの畳が、湿気で裏に張り付く。
ベランダのアルミサッシにをかけ、鍵のクレセント錠を静かに回した。 キィ、とさな摩擦音が夜のに溶ける。
背で、玄関ドアが々しくく音がした。
「……真由美ちゃん? 鍵、いてたよ」
嘘をつくな。 おが鍵でけたんじゃないか。
「粗ごみ、今夜のうちに全部トラックに積んじまおう。お母さんも、それを望んでる」
ドカドカと、で玄関に踏み込んでくるい靴音。 迷いがない。 植田の狙いは最初から、靴箱の最段だった。
ガタッ、と靴箱の扉が荒々しく引きけられる音が響いた。
私はベランダへと滑りし、サッシを背でそっと閉めた。 たいのが、頬を打つ。
団のベランダは、隣の401号と、いケイ酸カルシウム板の隔て板枚で仕切られているだけだ。 非常には蹴破って避難するための、あの板。
401号は、半に老が孤独して以来、ずっと空き部だった。
板のには、経劣化でコンクリートとのにわずかセンチほどの隙が空いていた。 私はが溜まったベランダのにいつくばり、リュックを先に隙から隣の敷へと押しした。
ガリガリ、とコンクリートとナイロンが擦れる音が鳴る。
「おい、真由美ちゃん!」
402号のリビングから、植田の声ががった。