"4回の救急着信と1ヶ月後の離婚宣告" 第6話
「必ない」
「でもちょっと変じゃない?」
「何が?」
「みおさんならもっと何か言いそうだからさ」
尚弥はさやを見た。
「おまで気にするな」
「私は気にするよ。だって私のことで喧嘩してるんだもん」
「喧嘩じゃない」
「じゃあ何?」
「みおが勝にすねてるだけだ」
言い切る声はかった。さやはそこで何も言わなくなった。
尚弥はグラスを取った。んだ。がくじた。スマートフォンをもう1度見た。しい通はない。しばらくしてさやはルームサービスのメニューをいた。
「何かべる?」
「いらない」
「昼からほとんどべてないでしょう」
「でいい」
「みおさんにられるよ」
冗談めかした言い方だった。尚弥はすぐに返さなかった。いつもならそれくらいの言葉は聞き流していた。みおなら確かに言う。昼を抜くな。胃薬をめ。夜遅くに酒だけむな。同じことを何度も聞いて何度も面倒だとった。今夜はそのどれも届いていない。
尚弥はスマートフォンをに取った。トーク画面をく。最は『お幸せに』。そこからは何もない。入力の表示もない。話もない。
「なおや」
さやが呼んだ。
「見すぎじゃない?」
「見てない」
「今見てたよ」
「を確認しただけだ」
「そう……」
さやはそれ以追わなかった。尚弥は画面を消した。自分から話をすればいい。そうわなかったわけではない。
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でもそれをした瞬に負ける気がした。誰に何を負けるのかそこまでは考えなかった。ただ今回だけはみおから折れさせる。その考えだけは変えなかった。
さやがそっと腕に触れた。
「なおや……」
「何でもない」
「本当にいいの?」
「みおがすねてるだけだ」
同じことをもう1度言った。今度は誰に言い聞かせているのか分からなかった。数放っておけば戻る。
さやは肩にを預けた。尚弥は拒まなかった。それでもさっきまで気にならなかったスマートフォンが界の端から消えなかった。
横浜ではたちがまだ術を続けていた。
「血圧60まで戻りました」
「維持して。血量確認します。まだ終わってない。急がなくていい。確実に止める」
術のでは藤原が緊急連絡先への発信履歴を確認していた。4回応答なし、3回途切断。森川が術へ戻るにその画面を1度見た。
「ご主まだ折り返ししないんですか」
「ないです」
「そうですか」
それ以は言わなかった。記録は残した。治療は続けた。誰も彼の返事を待っていなかった。
セントーサでは尚弥がその番号を着信拒否まではしなかった。ただ折り返しもしなかった。みおから届いた1を何度かいては閉じた。『お幸せに』。彼はそれをまだみおのだとっていた。その1の向こうで彼女が術台にいることをらなかった。
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そしてその夜、みおから次のメッセージが届くことはなかった。
翌朝、黒川尚弥は目覚ましが鳴るに目を覚ました。カーテンの隙から入るがセントーサホテルのを細く照らしていた。隣ではさやが眠っている。尚弥は枕元のスマートフォンを取った。を確認する。それより先に通欄を見た。仕事のメールが3件。秘の川から翌週の会議予定について1件。みおからは何もない。昨夜の最の表示はあの1だった。『お幸せに』。そのは空だった。
尚弥はしばらく画面を見た。夜に1度くらい来るとっていた。普段なら張先にいるは朝になるにい連絡が入る。事を取ったか、薬を忘れていないか、移予定は変わっていないか。昨あれだけ揉めたのだから何も来なくても議ではない。そう考えた。それでも尚弥は画面を消してすぐまたつけた。何もない。
ベッドがいた。さやが目をけた。
「なおや、いね」
「起こしたか?」
「うううん」
さやは体を起こし、尚弥の元を見た。
「を確認しただけだ」
「そう……」
しがあった。
「みおさんから何か来た?」
尚弥はスマートフォンを伏せた。
「来てない」
「珍しいね」
「何が」
「だっていつも連絡するんでしょう」
「昨は喧嘩したからな」
「じゃあってるんだ」
「拗ねてるだけだ」
昨と同じ言葉だった。
さやはベッドからりた。
「でも『お幸せに』ってちょっと怖くない?」
「何が怖い」
「普通喧嘩してる相に送る?」
「みおはそういう言い方をするがある」