"19年目の妊娠と妻を階段から突き落とした姑" 第8話
「はい。娘はまだ、あの男には切伝えていません」
敬語は悔しさを押し殺すように、く唸るような声で言った。
「娘が番恐れていたのは、あの怪物のような母子に、胎内の命のをられることでした。られれば、何をされるか分からなかったからです。だからこそ、全てを隠したままあのをたのです」
藤堂はく頷き、ファイルを静かに閉じた。
「ご主は今頃、何もらずに自由をに入れたとんでいることでしょう」
藤堂の瞳が、氷のようなたさを帯びて細められた。
「しかし、彼が失ったのは妻というだけではありません。その事実に気づいた、あの男はどうなるか」
夜の静寂の、反撃の刃が音もなく研ぎ澄まされていく。
志とかよは、まだ何もらなかった。
自分たちが嘲笑い、見していた女が、すでに自分たちの喉元にたい刃を突きつけていることを。
そして、ミキが命がけで守り抜こうとしている、な真実のを。
翌朝、のリビングでは、埃を巻きげながら慌ただしい作業がわれていた。
リビングのには、黒い型のゴミ袋がいくつも無造作に転がっている。
かよはミキの使っていたタンスの引きしを乱暴にけ放ち、を次々と引っ張りしていた。
「本当に、っぽいばかりね」
かよは引き抜いたを指先でつまみげ、顔をしかめて見せた。
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「見てよ、このな。貧乏臭いたらありゃしないわ」
かよはで笑いながら、19分のをゴミ袋のへと力任せに押し込んでいく。
こののために文句も言わずに働き続けた嫁の私物が、今や単なる産業廃棄物として扱われていた。
ミキが切にしていた本も、昔の写真アルバムも、かよは何の躊躇もなくゴミ袋へ投げ捨てていく。
洗面所からは、志がゴミ箱に物を投げ込む乾いた音が響いていた。
志は洗面台の棚から化粧や物を腕で薙ぎ払い、リビングのかよに向かって声をげた。
「母さん、あいつの化粧品も呂の私物も、全部まとめて捨てていいよ」
志の顔には、面倒な厄介払いを終えたような、すがすがしい笑みが浮かんでいた。
「あいつがこのに戻ってくることは、もう絶対にあり得ないからな」
志はスマートフォンを取りし、画面をタップしながら酷に笑った。
「あいつ名義の族カード、今すぐ利用止の続きをしてやったよ。これで銭も引きせないし、買い物もできない」
志は、ミキを完全に兵糧攻めに追い詰めたつもりでいた。
着るも、活費の逃げも完全に塞ぎ、文字通り無文でに迷わせる。
「自分から偉そうに婚届をしてきたんだからな、もう帰る所なんてどこにもない」
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志は画面を消し、満そうに顎をしゃくった。
「あのにいてあったがりも、今までだろうな。今頃はもく当てもなくて、惨めに泣き叫んでいるに決まっている」
彼らはから、ミキのきてきた痕跡をつ残らず消しろうとしていた。
しかし同じ頃、ミキは病院の厳なセキュリティで守られた特別な病にいた。
清潔ないシーツが敷かれたベッドので、ミキは静かにく息を吸い込んでいた。
腕の骨折の激痛だけではない。
階段を転落した際に打した背と腰の奥くに、焼けるような鈍い痛みがっていた。
ミキは苦痛に顔を歪めながらも、そっと両でお腹を優しく撫でさすった。
19の過酷な嫁いびりは、ミキのと体をすり減らし続けてきた。
だが、あのの暴力は決定に違っていた。
確な悪を持って、命を奪うかのように階段から突き落とされたのだ。
もしもの打ち所が悪ければ。
もしも、お腹を角に直接打していたら。
像するだけで、ミキの全からや汗が噴きし、刻みな震えが止まらなくなる。
病のドアが静かにき、主治医の佐伯と護師のが入ってきた。
「ミキさん、今のお加減はいかがですか?」
佐伯の声は、いつになく慎で静かだった。
ミキは青い顔をげ、すがるような瞳で佐伯を見つめた。
「先……この子は、本当にもう丈夫なのでしょうか?」
佐伯はベッドサイドに歩み寄り、力くゆっくりと頷いた。