"19年目の妊娠と妻を階段から突き落とした姑" 第4話
レナはを乗りし、甘えたような瞳で志の顔を覗き込んだ。
「あので暗い奥さんの顔を見るのも、もう限界だったんでしょ?」
志は切り分けた肉をに運び、満そうに頷いた。
「ああ、底うんざりしていたところだ。いつものでビクビク怯えてばかりでさ」
レナは嬉しそうにワイングラスを持ちげ、志のグラスにカチンと軽く当てた。
「じゃあこれからは、私が堂々と隣にいてあげるね」
志も満げに角を歪め、グラスのワインを気に煽った。
「全くだよ。あいつは昔から、何でもで抱え込んで黙り込む性格だからな」
志は自げにを鳴らし、勝な未来予をにした。
「どうせ今回も、病院のベッドでで泣き寝入りして終わりさ。文句も言えずに勝にていくなら、俺にとっては番都がいい」
自分がと級なワインを酌み交わしているその最。
妻がたい病のベッドで、の境を彷徨っていたことなど、志は像すらしていなかった。
志はただ、自分にとって都の良い薔薇の未来だけをのでい描いていた。
このレストランで交わされたっぺらい会話の全てが、に自分の首を絞めることになるとはらずに。
夜がく更けた病院の廊は、気なほど静まり返っていた。
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ナースシューズの音を忍ばせながら、護師のはミキの病を再び訪れた。
ベッドので眠りについているミキの横顔は、灯のを浴びてひどく青かった。
の胸の奥底に、ざわざわとした苦しいが渦巻いていた。
普通であれば、妻が救急で運ばれ傷を負えば、夫は仕事を放りしてでも駆けつけるはずだった。
だが、搬送されてから丸が経過しようとしている今も、夫からの否確認の連絡は度も鳴っていない。
それどころか、昼にやってきた実の父親でさえ、娘に涙を見せることすらなかった。
まるで徹な現検証をう鑑識官のように、黙々と証拠写真を撮してちっていった。
は胸元を押さえ、さく息を呑んだ。
何かが根本に異常だった。
この族には、として最も切な温もりや信頼が、決定に欠落していた。
はのポケットにを差し入れた。
指先に触れた、ミキから託されたい封筒を無識のうちにく握りしめる。
『、あのが来たら渡してください』
を完全に削ぎ落とした、あの虚無なミキの声が、のの奥にこびりついてれなかった。
そしてそれ以に、のを激しく揺さぶっていたのは、夕方に主治医の佐伯と交わした会話だった。
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ナースステーションの片隅で、佐伯はカルテを見つめながらに打ちしたのだ。
『ご主には、妊娠の件を切伝えていないようだね』
はベッドに歩み寄り、シーツので静かにしているミキのお腹へと、そっと線を落とした。
なぜミキは、宿ったばかりのしい命のを、夫に隠し通そうとするのか。
なぜやってくるはずの夫と、直接顔をわせて話しおうとしないのか。
封筒に入ったあの婚届は、単なる夫婦の別れの挨拶などではない。
の背筋に、たい悪寒が静かにった。
翌朝、総病院の正面玄関に、台の級が乗り付けられた。
いよいよ夫の志が、のレナを伴って病院へとやってきたのだ。
妻の体を配するためなどでは決してない。
ただ婚届を回収し、妻を追いすための訪問だった。
だが志はまだにもっていなかった。
自ドアの向こう側で待ち受けているものが、自らのを完全に崩壊させる絶望の幕けであるとは。
静寂に包まれていた病棟のい廊に、あまりにも釣りいな音が響き渡っていた。
コツ、カツと、いを乱暴に叩くハイヒールのい音が反響する。
そして、周囲の迷惑など切顧みない、男女の楽しげに弾む笑い声だった。
レナは志の腕に自分の体を擦り寄せながら、甘ったるい声で囁いた。
「ねえ、本当に今で全部終わりになるの?」
志はポケットにを突っ込み、得げに胸を張って答えた。