みかん小説
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"19年目の妊娠と妻を階段から突き落とした姑" 第3話

「来たぞ」

敬語は無駄のない取りで、真っ直ぐに娘の枕元へと歩み寄った。

ミキは包帯の巻かれた首をしだけかし、申し訳なさそうに線を向けた。

「お父さん、ごめんなさい。急に呼びしてしまって」

掠れた娘の謝罪の声を聞き、敬語は静かに首を横に振った。

警察署の現で何も働き、数え切れないほどの事故や事件の現をその目で見てきた。

そんな敬語にとって、この病の状況はあまりに異常な事件の現そのものだった。

敬語は娘の痛々しい体を観察しながら、淡々と尋ねた。

「痛みはどうだ?」

ミキは痛みを堪え、無理に角をげてみせた。

「薬が効いているから、丈夫」

敬語には、娘が嘘をついていることが即座に見抜けた。

無理に笑おうとする娘の青ざめた顔には、い疲労と絶望が刻み込まれていたからだ。

敬語は何も言わず、持参した黒い革鞄のファスナーをけた。

から取りしたのは、台の無骨な黒いレフカメラだった。

カシャ、カシャと、無質な子音だけがい壁の病たく響き渡る。

敬語は顔に切のりもさず、ただ黙々とシャッターを切り続けた。

腕の骨折による自然な曲がり方。

ガーゼのから覗く、部の々しい打撲痕。

そして、背の皮膚に残された、誰かののひらの形をしたい圧迫痕。

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りに任せて今ここで騒ぎてることは、何の解決にもならないことをっていた。

今この瞬に必なのは、な涙ではなく、徹で確実な事実の積みげだけだった。

から相の誰として、絶対に言い逃れができないかぬ証拠。

それこそが、警察官としてきてきた敬語の徹底した流儀だった。

枚もの撮を終え、敬語はカメラを静かにろした。

「診断たか?」

ミキはベッドの横にあるさな棚を、線で指し示した。

「ええ、そこの棚のに」

敬語が歩み寄り、棚のに置かれていた類にを伸ばした。

そこにあったのは、医師が作成した詳細な診断だけではなかった。

の診断に並んで、使い古された分いノートの束が然と置かれていた。

それは、ミキが嫁いだ19から、毎欠かさずき溜めてきた記のコピーだった。

敬語は袋をはめたで、ノートの最初のページを静かにめくった。

ページをめくるたび、几帳面でったミキの文字がびっしりと並んでいた。

『今も、私だけ夕のおかずをゴミ箱に捨てられた』

『2階の廊から、突き落とされそうになった』

並んでいるのは、普通の活では到底信じがたい言葉の羅列だった。

義母のかよから浴びせられ続けた、で理尽な暴言の数々。

の寒空の、階段の拭き掃除を何度も無理やりやり直させられた記録。

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そして、それらの虐待を見て見ぬふりをし、嘲笑い続けた夫の志の淡な態度。

で負わされたさな傷の数々も、付と付きで正確に記録されていた。

敬語はつの痛ましい記述に鋭い線を通し、切そうに鞄の底へとしまい込んだ。

ファスナーをしっかりと閉め、敬語は再び娘の顔を見つめた。

「例の件、管理会社には確認を取った」

敬語のく落ち着いた言葉に、ミキは静かにさく頷いた。

に佇む父と娘のには、単なる親子のを越えた、徹なまでの決が共されていた。

同じ頃、夫の志は内の級ホテルの最階レストランにいた。

のテーブルクロスが敷かれた席の向かいには、レナが座っていた。

レナは赤ワインの入ったグラスを指先で弄びながら、面がるように尋ねてきた。

「ねえ、奥さん本当にそのまま入院しちゃったの?」

志はフォークをかすを止め、げさにため息をついて肩をすくめた。

「ああ、実の階段から勝に転んだだけだよ。本当にあいつはげさなんだ」

その言葉を聞き、レナは甲い楽しげな笑い声をげた。

「でも、それって私たちにとってチャンスじゃない?」

志はミディアムレアに焼かれたステーキをナイフで切り分けながら、品に笑った。

「向こうから勝って、婚届でも置いてくれたら番楽なんだけどな」

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