"見えない星" 第6話
課は元のバインダーをき、そこに挟まれた類の節を読みげるようにをかした。
「複数の職員から、あなたの勤務態度に関する極めて刻な報告が寄せられました。業務における個な会話への耽溺、それによる著しい集力の欠如。さらに、宿泊客に対する馴れ馴れしく適切な言。加えて、清掃員の職務範囲を逸脱した勝な越権為の数々です」
「そんな……嘘です!」
はる子は叫ぶように否定した。
「私はこの、誰よりも真面目にフロアを担当してきました! 決められた清掃内にすべての部を完璧に仕げてきましたし、お客様に対して失礼な態度をとったことなど、度だってありません!」
「あなたがどうっていようと関係ありません」
課は酷に言い放った。
「現からは、これまで何度もで注したにもかかわらず、切の改善が見られなかったとがっています」
「での注……? いつですか!? 私はそんな注、これまで誰からも度も受けたことがありません!」
はる子の必の訴えに、課は元の類をペラリとめくった。
「先週の曜、そして週の曜です。記録に残っています」
「そんな……」
はる子は必にのの記憶をたどった。先週の曜も、週の曜も、彼女はいつも通りに淡々とベッドメイクとバスルームの清掃をこなしていただけだった。
広告
誰かから呼び止められて注を受けた記憶など、逆ちしても蘇ってこない。
「その報告をしたのは誰なんですか!? お願いです、その方をここに呼んで、私の目ので直接話をさせてください!」
「報告者のプライバシーを守る義務があります。名をかすことはできません」
課は腕を組み、完全にを閉ざした態度で首を横に振った。
「これはすでに事部、および経営陣の総として決定された事項です。今さら覆ることはありません」
「お願いします……もう度だけ、もう度だけでいいですから、チャンスをください……!」
はる子の声は涙で完全に濡れていた。彼女は机に両をつき、必にをげ続けた。
「私には、どうしてもこの仕事が必なんです……! 父は透析を受けていて、母も関節が悪くて働けないんです……私が料を稼がなければ、来の医療費が払えなくなってしまうんです……! これからはもっともっと気をつけます、誰とも言も私語を交わさず、ただ黙って働きますから……! お願いですから、クビにしないでください……!」
しかし、課の表筋は、ピクリともかなかった。その瞳には、傍のを眺めるかのような徹な無関だけが宿っていた。
「申し訳ありませんが、決定は決定です。規定に基づき、今末までの与は支されます。
広告
直ちに私物を理して、退館してください」
課はそう言い捨てると、もはやはる子の方を見ようともせず、元のパソコンのキーボードをカタカタと叩き始めた。 はる子はの力が完全に抜け、そのに崩れ落ちるようにへたり込んでしまった。 、どれほど腰が痛もうとも、どれほど疲労が蓄積しようとも、歯をいしばって積みねてきた努力の々が、たった数の虚偽の文面によって、瞬にしてゴミのように踏みにじられた。 病で痛みに耐えている両親の顔が脳裏をよぎる。来週に迫った透析の支払い、母の処方箋の代、アパートの更料。それらすべてが暗黒の渦となってのを駆け巡り、はる子の界は真っに染めげられていった。
の更の空気は、湿気と気が混ざりい、沈鬱に淀んでいた。 個ロッカーの扉をけたはる子は、震える指先でから私物を取りし、持参した布バッグへと詰めていた。 、毎のように袖を通し、汗を吸い込んできた青い作業着。胸元に縫い付けられた「田」の名札。客から謝の印にと渡されたさな折りの鶴。 そのすべてが、溢れる粒の涙によって滲み、ぼやけて見えた。 拭っても拭っても涙は止まらず、はる子はロッカーの鉄の扉に額を押し当て、声を押し殺して肩を震わせていた。
「……はる子さん」