"見えない星" 第4話
彼らは「サンキュー」と何度も繰り返しながら、はる子のを両で包み込むようにして謝を伝えた。客たちがちると、はる子もまた、自分のことのように嬉しそうな笑顔を浮かべて作業へと戻っていった。
くからその連の景を見つめていた田は、く銘を受けていた。 これこそが、自分が追い求めてきた真のサービス精神の体現であった。 マニュアルに定められた紋切型の会釈や敬語ではない。目のにいるをから助けたい、よく過ごしてほしいという純粋ないやり。それが何ら繕われることなく、自然なとして表している。
作業終を告げるチャイムが鳴り、は更へと続くエレベーターに乗りわせた。
「田さん、今もお疲れ様でした」
「はる子さんも、お疲れ様でした。またも頑張りましょう」
「はい! また」
はる子の濁りのないるい声を聞きながら、田は胸の内に確かな温もりが広がるのをじていた。 え切った代なホテルの片隅に、これほどまでに澄み切った魂を持つがまだ残っていたのだという事実は、経営者としての彼にとってもきな救いであった。
しかし、そうしたの親密な様子を、階段の踊りやフロントのカウンターの奥から、淡かつ敵に満ちた目で見つめている者たちがしていた。
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フロントデスクの正社員として勤務する佐藤京子と美奈のである。 彼女たちは入社以来、華やかなフロント業務を担うエリートとしての自負を抱いていたが、方で、現の清掃員たちが見せる真面目な働きぶりや、宿泊客からの何気ない謝の言葉に対して、常に屈折した劣等と嫉妬を抱き続けていた。
ある曜の朝、フロントの業務始、佐藤はの腕を掴み、目のない第会議へと引きずり込んだ。 カチャリとドアが閉まり、佐藤は腕を組んで振り返った。その瞳には、暗い決が宿っていた。
「さん、ちょっといい?」
は眉をひそめ、持っていた業務誌を胸元に抱えた。
「何? 改まって」
「田はる子のことよ。あいつの、そろそろ正式に問題にして、事部に突きそうとうの」
は目を丸くし、わずかに元を引き攣らせた。
「えっ……何を報告するのよ?」
佐藤はで嘲笑するように息を吐いた。
「決まってるじゃない。勤務の私な雑談のさ。それから、お客様に対する馴れ馴れしくて適切な対応よ」
の表に躊躇のがった。自、はる子が勤務に怠惰な態度を取っているところなど度も見たことがなかったし、彼女が悪でないことものどこかでは理解していたからだ。
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「でも……はる子さん、そんなに酷いことしてるかしら」
「いいから聞きなさいよ!」
佐藤はい調での言葉を遮り、歩詰め寄った。
「先週だって、国のお客様相に、タメ同然の崩れた英語でペラペラ喋りかけていたでしょう? あれがうちの格式いホテルの接客と言えるわけ? それに、あのしく入った寄りの清掃員と、毎毎業務を削ってのおしゃべりに興じてるじゃない。の真面目にやってる職員たちがどれだけ迷惑してるとってるの」
佐藤は言葉を巧みにすり替え、事実を図に歪曲していった。 はる子が迷子の国客を振り振りで救った親切を「格式を乱すタメの接客」と決めつけ、休憩における老へのささやかな気遣いを「勤務のの油売り」へと仕てげていく。
「にも、清掃の仕事を放りして、フロントの業務範囲に勝にをしてくることがいっていてやるわ」
「でも、それって完全な嘘じゃない……」
が々しく抗弁しようとすると、佐藤はその顔を睨みつけ、ピシャリと言い放った。
「いいのよ、これで! ルールはルールなの。契約社員の分際で、私たち正社員よりも目って客にちやほやされるなんて許せないのよ。の程をわきまえさせるべきなの」
佐藤の引な気迫に気圧され、はそれ以の反論を諦め、さく頷いて同調してしまった。