"傷だらけの天使" 第7話
「……だから、今度の週末もお見いの予定なんて入れないでって言ったよね? 私にはくつもりはないから」 『……!』 「仕事が忙しいの! 勝に話を決めないでよ!」 ガチャリ、とさんはたく話を切ると、ソファのにスマートフォンを投げし、を抱えてくうなだれた。
「また……実からの催促か?」 私が配そうにづくと、さんは力なく顔をげた。 「うん……。両親は、私が医者を辞めるまで、ヶに回のペースで無理やりお見い相をセッティングしてくるの。今回は、実からで数のところにある病院の、院の息子さんらしくて……」 「参ったな……。このままだと、いつか本当に連れ戻されちまうぞ」 私の言葉に、さんははっと顔をげ、まるで何かをいついたかのように、私の両をギュッとく掴んだね。
「ねえ、健太さん……お願いがあるの」 「え、なに? 怖い顔して」 「私と、『婚約者のふり』をしてくれない?」 「……は?」
寝にとはまさにこのことだ。私はあまりの突な提案に、抜けな声をげてしまった。 「婚約者のふりって……俺が?」 「そう! あなたは役者なんでしょ? 演技なら得分野のはずよ!」 「いや、得分野って言われてもだな……相は本物の医者の両親だぞ。俺みたいな底辺役者が、そんな芝居打ってボロがたらどうすんだよ」 「丈夫、お願い! 私を助けだしてくれるとって……! このままだと、私は本当に両親の言いなりになって、自分のもも全部奪われちゃうのよ……!」
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さんの潤んだ瞳で必に懇願されると、男として、いや、のとして「断る」という選択肢が自分の脳内から綺麗に消えっていくのをじた。 ――くそっ、このい顔で頼まれたら、引き受けるしかなじゃないか。
「……分かったよ。そこまで言うなら、協力してやるよ。ただし、演技指導は厳しくしてくれよな」 「本当!? ありがとう、健太さん!」 さんは満面の笑みを浮かべ、私の胸にび込んできた。 その柔らかい温もりをじながら、私は「これ、とんでもないことに巻き込まれたんじゃ……」という抹のを、の奥底へとそっと押し隠したのだった。
それからというもの、私たちは「お互いのプロフィールや好きなべ物、馴れ初め」などを入りに予習し、デートのたびに模擬尋問を繰り返した。 「いい? あなたの職業は?」 「売れっ子の……いや、駆けしの台俳優、相馬健太です」 「そうじゃないわよ! 自信を持って! 『を守る覚悟のある男です』って言いなさい!」 「はい、を守る覚悟のある男です……って、おい、なんか気恥ずかしいぞ!」
そうやってじゃれいながら過ごすは、偽りの関係であることを忘れさせるほど楽しく、いとおしいものだった。しかし、運命のは容赦なくやってくる。
週末の朝、私たちはを乗り継ぎ、さんの実がある隣県の級宅へと向かっていた。
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内の窓ガラスに映る自分の顔は、緊張でしこわばっている。隣に座るさんも、青い顔をして自分の膝のでしっかりと拳を握りしめていた。
「丈夫か?」 「うん……緊張するけど、健太さんがいてくれるから」 彼女は私の肩にそっとを預けてきた。そのさな体を支えるように、私は彼女のをしっかりと握り返した。
さんの実は、像を絶するほど派な豪邸だった。をくぐり、入れのき届いた庭を通り抜けて玄関のにつだけで、このがどれほど社会ステータスをんじているかが嫌というほど伝わってくる。
「いらっしゃい」 な製の玄関ドアをけて顔をしたのは、さんと目元がそっくりな、しかしどこかややかな気配をまとった品な母親だった。 「母さん……ただいま。それに、今はおらせしたいがいて……」 さんが私を押しすようにして紹介する。 「はじめまして。とお付きいさせていただいております、相馬健太と申します。本はお招きいただき、ありがとうございます」 私は精杯の笑顔を作り、々とをげた。
母親は、私ののてっぺんからのつま先まで、値踏みするようなたい線でじろじろと観察した。 「……ふうん。あなたが、噂の……」 母親はそれ以言葉を発することなく、「とりあえず、に入りなさい」