"傷だらけの天使" 第1話
暗い台の袖、張り詰めた空気のなかで、私は首にる鈍痛を堪えていた。 芝居の稽古の最、に踏みした拍子にひねった首は、すでに嫌な腫れを見せ始めている。病院へくこともままならず、私は慣れな松葉杖の柄を両でく握りしめ、バランスを取りながらアスファルトの歩をんでいた。
方から、の子供が全速力でってくる。 避けようとをかした瞬、松葉杖の先端が溝に引っかかり、私はきくバランスを崩した。転びそうになった私の敷きになり、その衝撃をに受け止めて助けてくれたのは、を纏ったの女性――ジョイさんだった。
それがすべての始まりだった。 そして今、私はわぬアクシデントから、彼女のスカートのを垣見てしまったという気まずさを抱えたまま、目のの現実に向きっている。
「にっていい? 責任取ってよ」
いがけないその言葉に、私の考は完全に止した。 なんと、あの美しきジョイさんを、これから私の狭いアパートに招待することになってしまったのだ。 こんな甲斐ない志のい男の姿のまま、彼女を部に迎えておくわけにはいかないだろう。
私の名は相馬健太、歳。この濤のような々の始まりは、あの――あの病院の廊から音をてて幕をけたのだった。
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「うわっ……!」
私のきな声が病院のロビーに響き渡り、周囲にいた々が慌ててを止めて駆け寄ってきた。 「どうした? 丈夫か?」 「ごめん……」 そんな配の声が、次々と私のにび込んでくる。しかし、首を襲うあまりの激痛に、私は声を発して反応することすらできなかった。
「おい、腫れてきたな。お、すぐに病院にけ!」 頃から何かと世話を焼いてくれる方さんに見送られ、私はそので配してもらったタクシーに乗り込み、そのまま病院へと急した。
「ああ、骨は折れてはいないね。でも、しばらくは絶対静だな。転んだのか?」 「……台から落ちました」 「ああ、役者さんなんだ」 そう言いながら、際よく診察を続けてくれる医師の名札には、「子」と記されていた。 ニコニコとしていて、いかにも優しそうな、当たりれで言えば違いなく「当たり」の医者だとそのはった。だが、自分の内面やについて根掘り葉掘り聞かれることが極度に苦な私は、そっと子先から線を逸らした。
「骨折ではないけれど、ヒビが入っているね。いずれにしても、ヶくらいは無理しないで過ごして」 「……はい」 私はさくをげ、診察の引き戸をけて待へと戻った。
先が告げたように、私は役者だ。だが、芝居のギャラだけで活できるほど甘い世界ではない。
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週にはがっつりアルバイトをしなければ、々の糧すら得られないのが現実だった。 「歳までに目がなかったら、俳優のは諦める」 両親ともそう固く約束をしている。いわゆる、の崖っぷちにたされた齢だ。 ――このの怪で、劇団の稽古はどうなる。バイトの休みももらえるだろうか。
私は会計を待つに、バイト先に状況を報告しようとポケットからスマートフォンを取りし、病院のへと向かった。しでものい現を狙って選んだ、体力勝負の力仕事のバイト。しかし、この松葉杖をついたでは、職に迷惑をかけることは目に見えている。
ポケットからスマホを覗き見ながら歩いていた、そのだった。 「おっと……!」 目のに、さなが突然びしてきた。いつもなら瞬に体をかわして避けることができる、なんてことのない常のさなトラブル。 しかし、今の私にはそれができなかった。
松葉杖ごときくバランスを崩してしまった私は、自分の体を支えきれず、そのままい面へと盛に倒れ込んでしまったのだ。 「やばっ……」
面からの衝撃に備え、わずく目を伏せた瞬――ふわりと、柔らかい触とよい甘いりが、私を優しく包み込んだ。 「え……?」 恐る恐る目をけると、界のすべてが真っに染まっていた。
「丈夫ですか?」 私のから、女性の声が聞こえる。何事かとパニックになりながら、私は必に目のの状況を脳内で理しようとした。