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"七年消えた母と五千万の温室" 第16話

ドガンッ! バキィッ!!

に、骨を砕くような破壊音が連続して霊する。 父は額から汗と血を流しながら、憑かれたようにハンマーを振りろし続けた。 んだコンクリートの破片が父の頬を切り裂き、血が沫となって散っても、父の腕は止まらなかった。

「登紀子ッ! 登紀子ぉぉぉっ!!」

数発目の打撃が振りろされた瞬

メキメキメキッ……!

台座の央を斜めにる、太い亀裂がじた。 セメントのち込める。

父はハンマーを放りすと、素でその亀裂に指をねじ込んだ。 爪が根元から剥がれ、鮮血がコンクリートを赤く染めるのも構わず、力任せに破片を引き剥がす。

バリバリッという鈍い音とともに、キロを超えるセメントの塊がに転がり落ちた。

ち込めるの向こうから、たい、湿ったの空気が吹きがってきた。 乾きのの匂い。 腐敗したの匂い。 そして、閉じ込められていた、懐かしくて切ない、母のの残りのような微かな気配。

灯の斉に、穿たれた穴の底を照らしした。

黒く湿った粘質の。 そのに、埋もれていた。

にまみれた、ベージュの布。 母が失踪したあの京のデパートへくと言って羽織っていった、質なトレンチコートの襟元だった。

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「あ……ああ……あああっ……!」

父はそのに崩れ落ち、したその布切れに顔を押し当てて、子どものように号泣した。

鑑識課員たちが斉に駆け寄り、父を引きす。 「鑑識作業に入る! 遺体を傷つけるな、ブラシを持ってこい!」

青いビニールシートが素く広げられ、慎に、ミリ単位でが払われていく。

器ので、を超えて、母の姿がしずつへと現れていった。

トレンチコートの胸元。 そのからてきたのは、にまみれた黒い本革のハンドバッグだった。 バッグのファスナーをけた鑑識員が、慎にピンセットでを取りしていく。

母の運転免許証。 槻登紀子、昭。 顔写真のの母は、の穏やかな笑顔のまま、青を見つめていた。

そして、免許証の隣から現れたのは、折りたたまれた枚のレシートだった。 、午分。 隣町のデパートのコスメカウンター。

品名:『ルージュ ヴォリュプテ シャイン No.15』。

母は、を持って逃げる準備など、何つしていなかった。 ただ、娘の卒業を祝い、約束のを買い、そので真っ直ぐにこのへと帰ってきたのだ。

そして、待っていたのは。 会社の借を肩代わりさせるために保険証を握りしめた夫と、親友の顔をした悪魔の囁きだった。

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から、骨化した母のが現れた。 薬指には、父が昔贈った、ささやかなシルバーの結婚指輪が嵌まったままだった。

そのは、何かを必に拒絶するように、あるいは何かを守ろうとするように、胸ので固く握りしめられていた。

私は、に膝をついた。

「……お母さん」

伸ばした指先が、たいトレンチコートの裾に触れる。 たさが、指の腹から臓へと伝わってくる。

「遅くなって、ごめんなさい……。本当に、ごめんなさい……」

涙が次から次へと溢れ落ちて、母のコートのを洗い流していく。 、ずっと背負わされ続けてきた「悪女の娘」というが、音をてて砕け散っていくのをじていた。

母は逃げてなどいなかった。 母は、私をしたまま、ここで戦っていたのだ。

されていく父の絶叫が、夜の林に霊していた。 警察両のドアが閉まる直、母の遺体に向かって何度もを叩きつける父の姿は、もはやの尊厳を完全に失った、抜け殻のようだった。

季節は巡り、の張り詰めた空気が沿いの町を包み込んでいた。

旬。 の旧社は、裁判所による差し押さえの赤が貼られ、もなく静まり返っていた。 会社の破産続きは瞬くに完し、渡りと巨額の詐欺容疑によって、父がかけて築いた虚は跡形もなく瓦解した。

刑事裁判の準備が、拘置所からの報告が弁護士を通じて届いていた。

父・槻昭彦は、すべての罪を全面に認めた。

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