"十八年間、壁の中にいた妻" 第7話
松永はブラフを織り交ぜながら、静かに、しかし逃げのない声で迫った。
「職の証言もある。あなたが夜けにでモルタルを塗っていた。なぜですか? なぜ、をてったはずの嫁のバッグが、あなたが塗り固めた壁のからてくるんだ?」
静枝の指先が、刻みに震え始めた。
「……言えません」
「言えないんじゃない、言わなきゃいけないんだ。静枝さん、あなただけの問題じゃない」
松永はを乗りし、机を拳で叩いた。
「息子の俊平さんにも、共犯の容疑がかけられているんだぞ」
静枝の体が、ビクッとねがった。
「俊平が……?」
「そうだ。夫である俊平さんが綾乃さんを殺害し、あなたがそれを助けして隠蔽した。警察は今、そう見てて俊平さんを取り調べている。このままだと、俊平さんは殺共犯で起訴されることになる」
「違う!」
静枝のから、張り裂けるような叫びががった。
皺だらけの顔が歪み、粒の涙が溢れした。
「俊平は関係ない! あの子は何もらないんです! 私が……私が全部やったんです!」
防壁が、音をてて崩壊した。
静枝は机に額を擦りつけるようにして、むせび泣きながら語り始めた。
「あのの夜け……庭にたら、井戸の横にバッグが落ちていたんです。血が……血がべっとりとついていて……」
「それで、どうした」
「夜、俊平が酷く酔っ払って帰ってきて、寝で綾乃さんと激しく言い争っていたのをいしました。
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あの子が……俊平がかっとなって、綾乃さんを殺してしまったんだとい込んでしまったんです」
松永は目を見張った。
「俊平さんが殺したと?」
「ええ……! あの子が綾乃さんを殺して、遺体をどこかへ隠しにったんだと……そう確信してしまったんです。私のたったの息子を、殺しにするわけにはいかなかった! 俊平を守りたかった! だから庭の血を洗い流して、バッグを燃やそうとしたんです! でも燃えなくて……事の壁の隙に落として、セメントで塞ぎました……!」
そのだった。
取調のドアが凄まじい音をててき、廊でマジックミラー越しに聴取を聞いていた俊平が乱入してきた。
制止しようとする捜査員を振りほどき、俊平は静枝のに膝をついて掴みかかった。
「母さん! 母さんッ!」
俊平の目は真っ赤に血り、涙とでぐしゃぐしゃになっていた。
「なんてことをしたんだ……! 俺が殺しただと!? 俺が綾乃を殺すわけないだろうが! 綾乃はどこだ! おが殺したのか!? 綾乃をどこへ埋めたんだよ!」
俊平の絶叫が、狭い取調に反響した。
、母を信じ、妻の帰りを待ち続けてきた男の、魂の咆哮だった。
だが、静枝は茫然とした目で息子を見げ、震える声でこう言った。
「俊平……私は、殺してなんかいないよ」
「嘘をつくな!」
「本当だよ……! 私は、バッグを隠しただけだ。
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綾乃さんは……綾乃さんは、本当に自分ので、へてったんだよ……!」
取調が瞬で静まり返った。
松永が静枝を睨みつける。
「自分のでてった? あれだけの血を流してか?」
「わかりません……でも、私は体なんて見ていない! 庭には血とバッグがあっただけで、綾乃さんの姿はどこにもなかったんです! 本当です、信じてください……!」
松永は即座にポリグラフ(嘘発見器)の検査を請した。
静枝の精神状態を考慮しながらわれた検査の結果は、捜査本部に激震をらせた。
静枝は「バッグを隠したこと」についてはい虚偽反応を示したのに対し、「篠原綾乃の遺体の所をっているか」「篠原綾乃を直接殺害したか」という問いに対しては、完全に「真実」の反応を示したのだ。
静枝は、本当に遺体の方をらなかった。
彼女はただ、息子が殺を犯したと盲信し、血まみれのバッグだけを壁のに封印したに過ぎなかった。
では――篠原綾乃は、あの量の血を流しながら、体どこへ消えたのか?
捜査は、再び巨なのへと突き落とされた。
*
そのの夕方、諏訪警察署の松永のデスクの黒話がけたたましく鳴り響いた。
「はい、未解決事件捜査班、松永です」
『……もしもし、警察の方ですか。夕方のニュースを見て、居てもってもいられなくなってお話しました』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、ひどく緊張した、齢の男性の声だった。