"妻の手術日に3000万奪った夫の代償" 第15話
しかし紬は、瞥もくれなかった。
彼女はのを、まるで端のころを避けるかのように、静かに通り過ぎた。 その横顔は、点の曇りもないののように凛としていた。
あなたたちに与えるけは、もうありません。
誰にも聞こえないほどのさな声でそう呟いたのを、隣にいた私だけは確かに聞いていた。 それは過との完全な決別を告げる、く、そして美しい誓いの言葉だった。
*
季節は巡り、翔太に判決がされてから数の歳が流れた。
世の喧騒は、まるで潮が引くように、次の刺激な事件へと移っていった。 結という名も、々の記憶からゆっくりと化し始めていた。 しかし彼らが犯した罪の代償は、決して消えることなく、それぞれのにいを落とし続けていた。
刑務所のい塀の内側で、結翔太はただ無為な々を過ごしていた。 受刑者番号で呼ばれ、決められたに起き、決められた作業をこなし、決められたに眠る。 も考も、まるで摩耗していくかのように々褪せていった。
当初、彼は控訴も考えた。 しかし、桐が率いる本最との呼び声もい弁護団をにして、国選弁護では勝ち目など万につもないことはを見るよりらかだった。 彼は戦うに、全てを諦めた。
誰として、彼に面会に来る者はいなかった。
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母親の雅美からも、妹の玲奈からも、便りのつさえ届かない。 彼は完全に、世界から忘れられたとなったのだ。
独のたいコンクリートの壁を見つめながら、彼は折、紬のことをった。 抗がん剤で髪を失い、それでも健気に微笑もうとしていた妻の顔。 自分が吐き捨てたない言葉。
なぜ、あんな過ちを犯してしまったのか。
悔のが鉛のようにを蝕むが、その声は誰にも届かない。 面会の誰も座ることのないガラスの向こうを見つめながら、彼はただ虚ろに呟くだけだった。
紬……すまなかった。
その声は、彼が失った過への空しい贖罪の言葉に過ぎなかった。
方、社会に残された者たちの終着駅もまた、惨めなものだった。
義父の誠は、全てを失った、急速にを病んでいった。 活にを窶し、酒に溺れる々。 かつてのプライドは、空き缶と共にドブ川へと流されていった。
そしてある寒いの朝、彼は公園のベンチで、誰にも取られることなくたくなっているのが発見された。 因は度の肺炎。 発見された、彼が抱き抱えていたのは、空になった焼酎のペットボトルだけだった。
元を引き取る者もなく、彼の遺体は政によって無縁仏として処理された。 豪華な墓などもちろんない。 ただ、共同墓の片隅に、彼の名が記されることもなく骨壷がつ、静かに置かれただけだった。
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母親の雅美と妹の玲奈は、そのも社会の底辺を彷徨い続けていた。
裁判の、座して紬に懇願したあの姿がテレビで繰り返し放送されたことで、彼女たちは本どこへっても『あの鬼畜の母親と妹』という消えない烙印を押されることになった。
雇いの清掃作業。夜のでの単純労働。 どんなに汚い仕事でも、きるためにはやらざるを得なかった。 かつて指先に煌めいていた宝はとっくの昔に売り払い、今はひび割れ、ささくれた労働者のに変わっていた。
彼女たちは京をれ、方のボロアパートを転々としながら、世からを隠すように息を潜めてきていた。
窓ので楽しそうに笑いう族を見るたびに、雅美の胸には激しい悔と、どうしようもない虚無が押し寄せる。
なぜ、私たちはこんなことになってしまったのか。
その問いの答えは、彼女自が番よくわかっていた。 彼女たちが犯した罪の代償は、では償えない、そのものだった。 それはあまりにもく、そしてあまりにもい、終わりのない贖罪の々の始まりだったのである。
彼らの王国は完全に崩壊した。 その焼け跡にはもはや何も残ってはいなかった。 ただたいが、彼らの犯した罪のさを裁くように、吹き抜けていくだけだった。
*
結翔太に判決がされてから、目の。