"19年間の嘘を暴いた1枚のDNA鑑定書" 第17話
ですが、私のではやらない。私は医者であって、神ではないのでね」
結局、芳の術は経験の浅い当直医によって成す術なくわれた。
彼女は奇跡に命を取り留めたものの、脳に受けたダメージは致命だった。
識は戻ったが、全は完全に麻痺し、言葉を発することもできず、ただ井を見つめて瞬きすることしかできない屍となってしまったのだ。
そして彼女が目覚めた先に待っていた現実は、どんな監獄よりも残酷な獄だった。
彼女の全財産は詐欺事件の被害者への賠償として差し押さえられた。 族は散し、誰として彼女を見う者はいない。
寄りのない彼女は、き先として自らが設した、あの介護施設「園」へと送られることになったのだ。
園は、彼女が私腹を肥やすために経費を削りに削った結果、もろくに入らず、壁にはカビがえ淀んだ悪臭が漂う、まさにこの世の獄そのものだった。
芳は、自分がかつて「畜」と蔑んでいた貧しい老たちと同じ汚れた寝巻きを着せられ、狭くいベッドのでただ井のシミを数えるだけの毎を送ることになった。
介護士たちは彼女が誰であるかをっているからこそ、より層彼女をぞんざいに扱った。 おむつを替えて欲しいと目で訴えても、「事のまでしなさい」
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とたく無される。
彼女は自分が築きげた欲望の獄に、自らが囚われることになったのだ。
夜ごと聞こえてくるの老たちの苦痛に満ちたうめき声に、彼女は恐怖に震え、声にならない鳴をげ続けた。
芳に残されたのは、皮肉にも鮮な識だけだった。
それは、かない肉体という牢獄ので自分が犯した罪のさと終わりのない絶望を、永にそしてはっきりとじ続けなければならないという、神がした最も残酷な罰であった。
京の夜景が望できる超層ビルの最階にあるルーフトップバー。
湊、玲奈、慧の兄妹は、価なシャンパンが注がれたグラスを静かにねわせた。
カチンという涼しげな音が、都会の喧騒を切り裂いて夜空に溶けていく。
彼らの表に浮かんでいたのは、かった戦いを終えた勝利の揚というよりも、むしろい荷物をようやくろすことができたかのようなある種の解放と、そして微かな虚しさだった。
「お祖母様、園に送られたってニュースで見たわ」
玲奈がカクテルに添えられたチェリーをに運びながら、静かに切りした。 慧は興がなさそうに肩をすくめ、無に頷く。
「ああ、あの施設の環境は劣悪だと聞いている。まあ自らが作りした獄だ。文句を言う筋いもないだろうがな。
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自業自得。まさにあの女のためにあるような言葉だ」
その言葉には、かつてのような鋭い憎しみは含まれていなかった。 ただ乾いた事実を述べるかのような、淡々とした響きだけがあった。
方で男の湊は、にしたグラスをゆっくりと回しながら、どこかくを見つめていた。 その線の先にあるのはきらびやかな夜景ではなく、もっと複雑で理のつかないの渦だった。
「父さんは……」
湊がポツリと呟いたその言に、兄弟のに瞬い沈黙が流れた。 玲奈も慧も、その問いにどう答えるべきか測りかねていた。
「今も会社にてきているよ。俺が言いつけた雑な類理を、毎文句つ言わずにこなしている。昨はコピーのトナーを自分で交換しようとしてスーツをインクで汚してしまい、ひどく慌てていた」
湊は誰に言うでもなく独り言のように続けた。 その景をいしたのか、湊の元に自嘲とも憐憫ともつかない微かな笑みが浮かぶ。
「かつてのあの威堂々とした神崎グループの総帥は、もうどこにもいない。そこにいるのは、ただ老いて力を失ったれなの男だ」
その声には、紛れもない苦々しさが滲んでいた。
彼らは確かに復讐に成功した。 自分たちのを狂わせた者たちに、相応の罰を与えた。
しかしその過程で、しずつ、しかし確実に崩れ落ちていく父親の姿を目の当たりにすることは、彼らが像していた以にの痛む作業だった。