"19年間の嘘を暴いた1枚のDNA鑑定書" 第9話
本当に申し訳ありませんでした』
男の謝罪は、巨なハンマーとなって宗のを殴りつけた。
彼は呼吸ができないほどの激痛に胸を鷲掴みにされる。
さらに続いて再された音声ファイルからは、もっとおぞましい声が流れした。
それは彼の母・芳と、現の妻である美咲の、弾むような会話だった。
『お義母様、この会にあの女を完全に追いしてしまわなければ、もし本当に妊娠でもしていたら宗さんのが揺らいでしまうかもしれませんわ』
美咲の猫撫で声だが、毒を含んだ声。 それに続く芳の酷な返答。
『配するんじゃないよ。たとえ腹の子が宗の種だったとしても、私が絶対に認めたりはしない。あの女の卑しい血がが神崎に混じるなど、私の目にが入っても許すものか。ふふふ』
『さすがはお義母様』
の女が、楽しそうに笑いながら真由を陥れる計画を練っている。
その音声は、どんな悪魔の囁きよりも宗のには恐ろしく響いた。
「うう、おえぇ……」
込みげてくる吐き気をこらえきれず、宗は斎からトイレへと駆け込んだ。
胃ののものが全てなくなるまで嘔吐を繰り返したが、胸の内のい嫌悪はしも軽くはならなかった。
彼はもの、自分を騙し欺いてきたの女。母親と妻という最もしいはずのが、実は怪物だったという事実に打ちのめされた。
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そしてそんな怪物たちと同じ根ので暮らし、彼女たちを族だと信じ込んできた自分自の愚かさに耐えられなかった。
真由がお腹に自分たちの子供を宿したまま、あのたいのに追いされた瞬、彼女がどれほどの絶望と恐怖をわったか。 その痛みがのを超えて、まるで自分のことのように骨に染みてじられた。
「うわあああっ!」
宗は鏡に映る自分の醜い顔を、力の限り殴りつけた。
パリィという音と共に鏡が砕け散り、彼の拳から々しい血が流れ落ちる。
しかし肉体の痛みなど、ズタズタに引き裂かれたの痛みに比べればもはや何でもなかった。
彼は血まみれのを拭うことさえ忘れ、コートを枚羽織っただけで狂のようにをびした。
ガレージに駆け込み、のエンジンを咆哮させる。
のを猛スピードで疾しながら、彼の脳裏には真由の顔と、の子供たちのたい瞳だけが繰り返し繰り返し浮かんでいた。
今彼女に会い、許しを乞わなければ。 そうしなければ、永にその会は失われてしまう。
その切迫したいだけが、彼を突きかしていた。
真由たちが滞するパークハイアット京。 そのに着いた、はさらにまっていた。
宗は傘もささずにからりつと、ホテルのエントランスのでただ彼女が現れるのを待ち続けた。
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き交う々がずぶ濡れの彼を奇異な目で見ていたが、もはや彼にとって本を代表する財閥の総帥という体面など、何の価値もなかった。
ただひたすらに惨めで、愚かで、罪いの男がいるだけだった。
どれほどのが過ぎったのか、宗にはもはやわからなかった。
りしきるたいは彼の体温を容赦なく奪い、級スーツはを吸って鉛のようにくなっていた。
しかし、彼のに燃え盛る罪悪の炎のでは、肉体な苦痛など取るにらないものだった。
その、ホテルのロータリーに台の黒塗りのセンチュリーが滑るように止した。 部座席のドアがき、夜の会を終えて帰ってきた真由との子供たちの姿が見える。
宗は凍りついたようにかなくなったを無理やり引きずり、彼らに向かって歩きした。
真由は、に打たれてまるでドブネズミのような姿になった宗の姿を認め、瞬そのを止めた。 だがすぐに、その表は氷のような無表へと戻る。
子供たちはそんな宗を、まるでしないかのように無し、ホテルの回転ドアへと向かおうとした。
「待ってくれ!」
宗は掠れた声で叫んだ。
そして次の瞬、彼は子供たちが見ているで、ためらうことなくそのに崩れ落ちた。