"「貧乏人」と笑われた男" 第4話
施設育ちだったと聞いても特に反応を示さず、「桐先の紹介なら何か理由があるんじゃないか」と言った。ところが玲奈が「IT関係って言ってたけど、たぶん普通の会社員。腕計もそうだった」と付け加えると、彼は聞から顔をげた。
「の計を見るに、自分の言葉を気にしろ」
「何それ」
「お、失礼なことを言わなかっただろうな」
玲奈は瞬黙ったが、すぐに「向こうも変なこと言ってたよ」と話をそらした。央に預があるから全部移すと言われたことを面そうに話し、「数百万かしたところでは何ともないでしょ」と笑うと、泰はわずかに眉を寄せた。
「名は?」
「だから、柊……何だっけ。宗介とかそんなじ」
泰の箸が止まった。
「柊宗介?」
玲奈は父の反応に気づかず、「たぶん」と答えた。泰はすぐに何かを尋ねようとしたが、確証がないとい直したのか、そのまま黙って事を続けた。しかし勤するので秘へ話し、「オルビット・ペイメントの代表者のフルネームを確認してくれ」と指示した。
答えは1分もかからず返ってきた。
代表取締役創業者、柊宗介。
泰は背もたれに体を預けた。
まさかとった。
オルビット・ペイメントは、央にとって極めてな法顧客だった。単に預額がきいだけではなく、同社の事業拡に伴って国送、決済、期資運用など幅広い取引が増えている。
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さらにオルビット経由でと関係を持つスタートアップ企業もなくなく、担当部署では最顧客の社として扱われていた。
「昨、柊社と何か接触があったという報告は来ているか」
泰が秘に尋ねると、答えは「ありません」だった。
まだには何も起きていない。
泰はそう考え、ひとまず胸をなでろした。
その頃、オルビット・ペイメントの財務部では、琢磨をに取引の見直しが始まっていた。な報復に見えないよう、複数の数料、信用格付け、決済障害のバックアップ、送網、資保全体制まで比較していく。調べれば調べるほど、央へ資を集させていたこと自体が、企業としてリスクになっていたことが分かった。
午4、琢磨が宗介の執務へ入った。
「結論から言います。移せます」
宗介は資料を受け取った。
「むしろ取引を分散した方が全です。今まで央に寄せすぎていました。今回の件がなくても、いずれ正すべきだったといます」
資料の最終ページには、央から移管する予定資の概算額が記載されていた。
法関係だけで約96億円。
宗介個名義を含めれば100億円を超える。
さらに決済事業に付随する契約を段階にへ移すことで、側が得ていた数料収入もきく減る計算だった。
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宗介は数字を見たまま、しばらく黙っていた。
「やるか」
琢磨は確認するように彼を見た。
「やります。ただしつ条件があります」
「何だ」
「玲奈さんの父親を困らせるためではなく、会社にとって理だから移す。それだけは忘れないでください」
宗介は頷いた。
それから央へ、正式な連絡が入った。
主座の資移管について相談したい。
その文が、数には法営業部から役員まで駆けがることになる。
翌の午、央本の法営業部には緊張がっていた。
オルビット・ペイメントから届いた連絡は、単なる座理ではなかった。普通預や定期預を含む主資を複数のへ移し、決済関連契約についても段階な見直しを希望するという内容だった。担当者は最初こそ条件交渉の問題だと考えたが、先方から提示された理由に「取引融関との信頼関係を再評価した結果」とかれていたことで空気が変わった。
法営業担当の部は、すぐに役員へ報告した。
利条件か、数料か、融資方針への満か。側には原因がい当たらず、担当者が最の面談記録を洗い直しても、きなトラブルはてこなかった。むしろ直の定期面談でも、オルビット側は今の事業拡について向きな話をしていたばかりだった。