"卒業3か月前に消えた娘" 第10話
証言を終えて傍聴席へ戻る途、佐々は茂のでを止めた。
何か言おうとして、言えない。
茂の方から声をかけた。
「来てくださって、ありがとうございました」
佐々はくをげた。
200212。
審判決が言い渡された。
達夫には罪判決がされた。
判決理由では、単の証拠だけでなく、蓮子が残した資料、被告自の帳、虚偽のアリバイ、補償をめぐる銭関係などが互いに補しっているとされた。
達夫は最まで、蓮子が命を失う直に何があったのかを詳しく語らなかった。
判決を聞き終え、ちがっただった。
傍聴席から、すみ子のさな声が聞こえた。
「蓮子……」
達夫のが瞬止まった。
振り返らなかった。
そのまま扉の向こうへ消えた。
6、兄夫婦の隣で緒に娘を探し、緒にを供え、緒にしんでいた男だった。
すみ子は閉じた扉を見つめ続けた。
鳴ることもできなかった。
泣くことさえ、その瞬にはできなかった。
裁判はそのも続いた。
控訴審を経て判決が確定するまで、さらにがかかった。
茂の体はそのにっていった。
杖だけでは歩けなくなり、すみ子が子を押して法廷へ通うようになった。
それでも、けるは必ずった。
「もう無理しなくても」
子どもたちに言われても、茂は首を振った。
「蓮子がでやったことを、親が途でやめられるか」
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判決が確定した、族は蓮子が眠る所を訪れた。
すみ子はい菊を供えた。
茂は子に座ったまま、い、何も言わなかった。
の族はしれた所で待った。
父が娘へ何を話したのか、誰も聞いていない。
聞く必もなかった。
茂はその約2にくなった。
最期の頃、数はほとんどなくなっていた。
ある晩、すみ子に言だけ言った。
「もっと、よくしてやればよかった」
誰のことか、すみ子には分かった。
蓮子がきていた頃、もっと優しくすればよかったというなのか。
娘の異変へもっとく気づくべきだったというなのか。
それとも、6も答えをせなかったことへの悔いだったのか。
おそらく全部だったのだろうと、すみ子はった。
佐々は裁判が終わった、へを送った。
封筒を6届けなかったこと。
約束を守れなかったこと。
ずっと謝りたかったこと。
返事をいたのは、すみ子だった。
《蓮子があなたに封筒を預けたのは、あなたなら最には届けてくれると信じたからだといます》
《はかかりました。でも、その信頼は届きました》
《どうか、自分を責めないでください》
佐々はそのを切に保管した。
かつて蓮子の封筒を置いていたクローゼットの同じ所へ、今度はすみ子から届いたをしまった。
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結教授もく自分を責めた。
定、域史の研究会がすさな冊子へ、の学について文章をいた。
題は、
《記録しようとした学について》
蓮子はかつて教授へ言った。
《消えてしまうにき止めたい》
。
。
。
そこで暮らした々の記憶。
発によって姿を変える所を、文字として残したかった。
結局、卒業論文は完成しなかった。
だが彼女が残したは、どんな論文よりくのを渡った。
ビニールに包まれたコピー。
図館の封筒。
そして通の。
川崎敬吾は退職、方のい取材を受けた。
「刑事で番記憶に残っている事件は何ですか」
記者に尋ねられ、川崎はし考えた。
「記憶に残る、という言い方は違うかもしれません」
「では?」
「忘れられない事件です」
事件名は言わなかった。
ただ、こう続けた。
「24歳の女性が、でってしまったことをで抱えようとした事件でした」
記者が黙って聞いている。
「今なら、誰かに相談してくださいと言えます。でも当の彼女には、誰を信じればいいか分からなかったのかもしれない」
度言葉を切った。
「何しろ、番信じていた親族が、その秘密のにいたんですから」
川崎には今でも分からないことがあった。
蓮子と達夫が最にどこで会ったのか。
蓮子はどんな言葉を発したのか。
達夫は何を言ったのか。
その部分について、達夫は詳しく語らなかった。