"卒業3か月前に消えた娘" 第2話
達夫が帰った、蓮子は夕飯をべなかった。
「具悪いの?」
すみ子が部のから声をかけると、
「し疲れただけ」
と返事があった。
翌朝、蓮子はいつも通りのにをた。
紺のコートに茶い鞄。玄関で靴を履きながら、母に「今は学?」と聞かれ、「うん」と答えた。
「夕飯は?」
「たぶんべる」
「たぶんじゃ困るよ」
蓮子はそこで度だけ振り返った。
「遅くなったら話する」
それが、母が聞いた娘の最の言葉になった。
その夜、蓮子は帰らなかった。
学の友宅で論文をきながら夜をかすことが以にもあったため、族は最初、それほど刻に考えなかった。
ところが翌になっても話はない。
学にも来ていない。
友たちも方をらなかった。
2目の午、父の茂は警察署へ向かった。
蓮子、24歳。
約160センチ。
富学国文学科4。
卒業予定まで、あと3か。
机のには鉛が並び、本棚には読みかけの本が残っていた。
しかし、から半以かけて集めたはずの卒業論文の取材資料だけが、きれいに消えていた。
成女性の方は、当、必ずしも事件として扱われるわけではなかった。自分のでをた能性、恋や庭事、関係の問題などが先に考えられ、確な事件性がなければ規模な捜査にはなりにくかった。
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蓮子のも、最初の数は同じだった。
担当刑事が本格に資料を受け取ったのは届けから5だった。
川崎敬吾警部補、37歳。
彼は最初のページをくと、族構成や所持品より先に、「最終目撃者」の欄でを止めた。
そこにかれていた名は、達夫。
蓮子の叔父だった。
達夫の説によれば、蓮子が姿を消した朝、集落から通りへるで偶然見かけたという。
「学へくところだといました」
「話しましたか」
「挨拶程度です。おはよう、と」
「様子は?」
「普通でした」
「のにも会っていますね」
達夫はしだけを置いた。
「兄のへきましたから。そのに蓮子とも話しました」
「何の話です?」
「卒業のことです。就職をどうするのかと」
川崎は供述の端に、さく鉛で「?」といた。
理由を説できるほどのものではなかった。
ただ、に2きりで話し、その翌朝にも偶然会う。その叔父が最終目撃者になっていることが、妙に引っかかった。
さらに川崎が気にしたのは、達夫が警察へ目撃報を伝えた期だった。
父の茂が正式に方届をす1。
まだ族でさえ「どこかの友宅にいるのでは」と考えていた段階で、達夫は自分から警察署を訪れ、「姪を朝に見た」と伝えていた。
「なぜ、そんなにく?」
若い巡査が聞くと、達夫はしそうに眉を寄せた。
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「兄から、蓮子が帰ってこないと聞いたので。しでも役にてればとっただけです」
説としては成していた。
だから、それ以追及できない。
川崎は学へ向かった。
結教授は、蓮子が以変わったことを話した。取材資料を研究へ置かなくなったこと、ぼんやり窓のを見るが増えたこと、卒論について具体な話を避け始めたこと。
「何か怖がっている様子は?」
川崎が聞くと、教授は考え込んだ。
「怖がる……というより、迷っていたようにいます」
「何に?」
「それが分かれば、私は今こうして悔していません」
結は机ので両を組んだ。
「度だけ言われました。を調べていたら、だけではない話がてきたらどうするか、と」
川崎の鉛が止まった。
次に話を聞いたのは、学院のだった。蓮子と域史について話すことがく、卒論の相談相にもなっていた女性である。
は刑事の質問を聞いたあと、しばらく迷ってから話し始めた。
「失踪する1かくらいです。蓮子ちゃんが変なことを言ったんです」
「どんなことです?」
「のおを調べていたら、の話がてきた、って」
「?」
「私もが分からなくて聞き返しました。そうしたら、『昔のじゃないよ。まだきてるたちの話』って」
蓮子はその、何枚かのコピーを持っていたという。
政文のように見え、表には番と額が並んでいた。が見せてほしいと言うと、蓮子はすぐ封筒へ戻した。
「『これはまだ見せられない』って言いました」