"年商一兆円の父にワインをかけた婚約者" 第12話
鳴り響く軽蔑のざわめきとカメラのシャッター音の、の社会命は、完全に息の根を止められたのだった。
*
チャリティレセプションでの公処刑から数。 神埼を取り巻く世界は、底なしの獄へと転がり落ちていた。
脱税と横領の疑惑、請けいじめの実態、そしてホテルでの狂言暴画は、テレビのワイドショーやネットニュースで連トップで報じられた。 クレスト百貨の株価はストップを続け、廃止が決定。取引先はすべて撤退し、全舗が閉鎖に追い込まれた。 自宅マンションのには昼夜を問わずマスコミが張り付き、インターホンが狂ったように鳴り続ける。
暗いリビングのソファで、圭吾はを抱えていた。 無精髭が伸び放題になり、かつてのスマートな御曹司の面は微もない。 テーブルのには、督促状と破産宣告の通が積みにされていた。
「どうして……どうしてこんなことに……」
隣の部からは、貴恵の虚ろな声が聞こえてくる。 「あの男さえいなければ……あの爺さんさえ、いなくなれば……全部元通りになるのに……」
その呟きが、極限まで追い詰められていた圭吾の狂気にをつけた。
(そうだ……)
圭吾の血った瞳がギラリとった。
(元凶はすべて、あの篠原宗郎だ。あいつがいるから、扶桑グループが圧力をかけてくるんだ。
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あいつさえ消えてくれれば……グループは継者問題で混乱する。その隙に、政治のコネを使って再起できるかもしれない……!)
理性を完全に失った圭吾は、以、歓楽の利権を通じてりった裏社会のブローカーに連絡を取った。 個名義で隠していた最の裏、千万円をすべて引きし、震えるで黒いアタッシュケースに詰めた。
「事故に見せかけてくれ。湾岸線の直線で、確実に……!」
ブローカーは卑た笑みを浮かべてを受け取った。 「へへっ、任せときな。型トラックでぺしゃんこだ。証拠なんて残りゃしねえよ」
圭吾は暗ので、歪んだ笑みを浮かべた。 これで助かる。これで全部、元の優雅な活に戻れるんだ。 それが、自分がさらなる底なし沼にを踏み入れていることだともらずに。
*
そのの夜。 激しいがアスファルトを叩きつける、台の型トレーラーが、京湾岸の側で息を潜めるようにアイドリングしていた。
無線に指示が入る。 『ターゲットのがた。黒のレクサス、品川ナンバー。で乗っている。やれ』
トレーラーの運転はヘッドライトを消したまま、ゆっくりと本線へと流した。 方に、煙をげてる黒塗りのセダンが見える。 周囲にの両はない。気の途絶えた直線。
「に晒せッ!」
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運転はアクセルペダルをまで踏み込み、ハイビームを点灯させながら、猛烈なスピードでセダンの方から突っ込んだ。 数トンの鉄塊が、速百キロを超える速度で標を砕する――はずだった。
だが、衝突のコンマ数秒。
方をっていた黒のセダンは、まるで背のきを完全に予していたかのように、鮮やかなハンドルさばきでの待避所へと滑り込んだ。
トレーラーは虚しく空を切り、濡れた面でスリップしてガードレールに激突、横転した。
を散らして止まったトレーラーを取り囲むように、のから突如として数台の両が現れた。 赤灯が斉に点灯し、けたたましいサイレンの音がの夜空を引き裂く。 警庁の覆面パトカーと、特殊急襲部隊だった。
「警察だ! くな!」 銃を突きつけられ、フロントガラスを破って引きずりされた運転は、に顔を押し付けられながら絶叫した。
「頼まれただけだ! をもらったんだ! 神埼圭吾って男に、千万で頼まれたんだよォッ!」
その告は、載カメラと捜査員のレコーダーに克に記録されていた。
わずか。 夜けの静けさに包まれていた神埼のタワーマンションのドアが、激しく打ち鳴らされた。
「警察です! けなさい!」
チェーンが引きちぎられ、の捜査員たちが崩のようにリビングへ踏み込んできた。
パジャマ姿で呆然とち尽くす圭吾のに、逮捕状が突きつけられる。