"出生届を止めた助産婦" 第10話
30くの夜。
抱いた子を放した。
本当の娘である幸子を受け取ったびと、もうの赤子を失ったようなしさが同にあった。
あのを、娘自が母になった今、し理解したのかもしれない。
幸子は千代を見た。
「千代おばちゃん」
「何?」
「私がまれた、抱いてくれたんだよね」
「そうだね」
「ありがとう」
千代の目に涙が浮かんだ。
「今さら何を言うの」
「自分が母親になったから」
幸子は笑った。
「言っておきたくなった」
その数、子も女の子を産んだ。
今度は幸子が病院へ見いにった。
子の娘を抱かせてもらいながら、「私、この子の伯母さんみたいなものかな」と冗談を言った。
「違うでしょう」
「じゃあ何?」
子はし考えた。
「説できない親戚」
は声で笑った。
血のつながりはない。
戸籍にも何もない。
けれどのには、まれた瞬から共しているがあった。
その関係には、名がなかった。
名がなくても、消えるものではなかった。
ハルがくなったのは、80歳を過ぎただった。
眠るような最期だった。
葬儀の、の積もったへ、幸子も子も族を連れて戻ってきた。
ともすでに50代になっていた。
棺ので焼を済ませたあと、幸子はしばらくハルの遺を見ていた。
若い頃の写真だった。
助産婦のを着て、し緊張した顔で正面を向いている。
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「先、ずっと気にしてたね」
子が隣で言った。
「うん」
ハルはに会うたび、直接謝ることはなくなった。
それでも祭りのにが元気でいるのをくから確かめるように眺めていた。
幸子が子を産んだも。
子が母になったも。
誰よりんでいたという。
葬儀の、ハルの姪が古い箱を持ってきた。
「これ、先がに渡してほしいって」
には産婆代の帳が入っていた。
昭30。
1018。
・相沢静、女児。
・千代、女児。
古びた鉛の文字。
その横に、さくきされた文があった。
《とも無事。絶対に忘れない。》
幸子はい、その文字を見つめた。
子が帳へ指を触れる。
「先、自分のことを許せなかったんだろうね」
「たぶん」
幸子は帳を閉じた。
「でも、私たちはちゃんときたよ」
のるへると、静と千代が並んでっていた。
とも80歳い。
背も曲がり、歩く速度も遅くなった。
それでも幸子を見る千代の目と、子を見る静の目には、昔と変わらないものがあった。
「寒いから先に帰ろう」
幸子が言う。
すると千代が笑った。
「寄り扱いするんじゃないよ」
「分寄りでしょう」
「自分だってもうすぐだよ」
「まだまだです」
そんなやり取りを聞きながら、子は笑っていた。
そのの祭り。
幸子と子は、久しぶりにでを歩いた。
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昔、同じ髪飾りを買ってもらったはもうなかった。
代わりに町から来た若い商が、さなアクセサリーを並べている。
幸子が赤いの髪留めをに取った。
「懐かしい」
「今つけるの?」
「孫に買うの」
子も同じものをに取った。
「じゃあ私も」
は顔を見わせた。
結局、何経っても同じ物を選んでいた。
そのの夕方。
古いの縁側で、静、千代、幸子、子が4並んだ。
孫たちは庭をり回っている。
幸子がふいに言った。
「昔ね、友達に聞かれたことがあるの」
「何を?」
静が聞く。
「本当のお母さんはどっちって」
千代の表がしいた。
「何て答えたの」
「んでくれた母は。育ててくれた母もって」
幸子は千代を見る。
「でも私にはもう、赤ちゃんのに泣いたら抱いてくれた母がいるって言った」
千代が目を伏せた。
子も静の肩へそっとを置いた。
「私も同じだよ」
静が笑おうとして、結局泣いた。
「何の話をしてるのよ」
「何でも同じでしょう」
幸子が答える。
誰かが、母親とは何かを決められるわけではない。
血を分けたこと。
産んだこと。
育てたこと。
抱いたこと。
どれが番切かと比べる必もなかった。
あの3は、ハルの失敗からまれた。
それは決して美しい来事ではない。
つの族を傷つけ、の助産婦に涯消えない悔を残した。
もしく気づかなければ、もっときな劇になっていたかもしれない。