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"十二年前、泥水に捨てられた私" 第10話

には、芸術性を持つ女の音(ことね)が。

さらにそのには、穏やかで優しい次男の湊(みなと)が。

そして最には、族の太陽のような女の結菜(ゆいな)がまれた。

女の紬を含め、の子供たち。

かつて静まり返っていた邸宅は、子供たちの歓声と音、そして温かな笑い声で満ち溢れるようになった。

圭吾は、血の繋がりがあるかどうかなど度たりとも識させることなく、女の紬を誰よりも慈しみ、誇り女として育てげた。

奈緒は毎晩、子供たちの寝顔を見守りながら、神への謝を捧げずにはいられなかった。

しかし、この平穏で眩い々の裏で、奈緒を捨てたの歯は、完全に狂い始めていた。

の歳は、つの族の暗を、あまりにも残酷に分かち尽くしていた。

かつて隆司と絵里が「待望の跡継ぎ」として持て囃した息子の翔太は、祖母である静子の常軌を逸した甘やかしによって、絵に描いたような暴君へと成していた。

「翔太は事な跡取りなんだから、っちゃいけません」「何をやっても許される特別な子なんだよ」

そう育てられた翔太は、になる頃には同級への暴力を繰り返し、に入ると喫煙、万引き、恐と非のエスカレートが止まらなくなった。

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警察や学から呼びしを受けるたび、隆司と絵里は疲れ果てた顔でげ続けた。

「申し訳ありません、庭で厳しく指導しますから……」

だが、に連れて帰れば、静子が「うちのい翔太がそんなことをするはずがない! 全部あの子を嵌めようとした周りが悪いんだ!」と庇いてし、嫁である絵里に矛先を向けた。

「これも全部、あんたの躾がなってないからだよ! 母親のくせに、跡継ぎまともに育てられないで!」

絵里には、もう言い返す気力も残っていなかった。

かつて親友から夫を奪い、豪邸の若女将として勝ち誇っていた頃の面は微もなかった。

だった目元にはい皺が刻まれ、髪は艶を失い、贅沢品を買うもとっくに尽きていた。

の老舗呉』の経営もまた、代の波に呑まれて急速に傾いていた。

価な量販やインターネット通販の台により、額な着物の需は激減。

先代が残した額の遺産と産は、翔太の度なる示談や、隆司の放漫経営によっていつぶされ、からの追加融資も打ち切られていた。

々の資繰りに追われ、隆司は毎晩のように酒を煽り、酔しては絵里や静子と鳴りうのが常となっていた。

「くそっ……どうしてこんなことになったんだ……! 俺は跡継ぎの男の子をに入れたんだぞ! それだけで、すべてくいくはずだったんじゃないのか……!」

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酒の匂いを撒き散らしながら管を巻く隆司の脳裏に、折、の夜にいつくばっていた奈緒の姿が浮かぶことがあった。

だが、彼はすぐにその記憶を振り払った。

あんな貧相で、男の子も産めない役たずの女など、捨てて正解だったはずだ。

今の苦境は、すべて景気のせいだ。絵里の教育が悪かったせいだ――そうやって、自分自を欺き続けるしかなかった。

そんな破滅寸に、通の招待状が届いた。

取引のある繊維問の伝を通じてい込んできた、神崎ホールディングスの『発記謝パーティー』の案内状だった。

『神崎ホールディングス』の名を見た瞬、隆司は溺れる者が藁を掴むようないで目を血らせた。

「絵里、準備しろ! 来週、このパーティーにくぞ!」

「えっ……でも、私たちなんかがっても……」

「馬鹿野郎! 神崎グループといえば、今や国プロジェクトをもかす超巨企業だ! 会に直接取り入って、うちの伝統芸の帯を記品として採用してもらうとか、何かしらのパイプができれば、発で息を吹き返すんだよ! これは俺たちのを賭けた最のチャンスなんだ!」

こうして、崩壊寸は、汚れたプライドと浅ましい欲望だけを抱えて、あの豪奢なパーティー会へとを踏み入れたのだった。

そして、運命の針はなりった。

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