"300億円が消えた結婚式" 第6話
がりなくなって字がさくなっているところまである。婦側。名が1つしかなかった。柏未令。それだけだった。
私は話をかけた。兄はまだ会社にいた。
「見た?」 「ああ。」 「どういうこと?」 「うん。」
兄の返事が遅い。周りにがいるのだと分かった。
「直せ。」
30分にかかってきた話で事を話した。8に入ってすぐ園部から連絡があったのだという。式の費用は全額こちらで持つと周さんが言った。総額は1340万円。付も当の支払いも園部が用する。1円もさなくていいって言われた。
「それで納得したの?」 「最初はありがたいとったよ。」
兄は正直だった。でもそのにこう言われた。費用をすのはこちらだから選もこちらでさせてもらうって。
「選?」 「招待する客の顔ぶれのことだ。」
私は子に座り直した。うちの柄にう席にしたいと言われた。取引先を呼ぶ席にの同僚を並べるわけにはいかないって。
「それ誰が言ったの?」 「えりさんのお父さんだ。」 「えりさんは同席してなかったの?」
兄の声は落ち着いていた。落ち着いているのが私には番腹たしかった。
「お兄ちゃん、それは断る話だよ。」 「断ったよ。」 「え?」 「せめて資材課の主任だけでもって言った。それで無理だと言われた。」
兄はそこで度息を吸った。
「その代わり次会をやっていいと言われた。
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会社のはそっちでって。」
次会に呼ばれなかったが集まる所にそういう名をつけてのだ。
「おだけは特別だとも言われた。血のつながった内だからなって。」 「特別?」
26のうち25を消して、残った1を特別と呼ぶ。私は言葉を選ぶのをやめた。
「お兄ちゃん、それ族の話じゃないよ。を消す話だよ。」 「ミレイ。」 「1円ももらってないよね。それなのにどうして向こうが決めるの?」 「をす方が決めるんだ。会社と緒だろ?」 「緒じゃない。」
私は自分の声がきくなったのに気づいてを押さえた。シンガポールの事務所にはまだ財務のが残っていた。
「緒じゃないよ。会社はをした分だけ権利を買うの。の22を消す権利は売り物じゃない。」
話の向こうで兄が笑った。優しい笑い方だった。それがまた悔しかった。
「お、そういう言い方がになったな。」 「お兄ちゃん、丈夫だ。式は1で終わる。えりさんとの活はそのあと何もある。」 「お兄ちゃんはそれでいいの?」 「良くはないよ。」
兄の声が初めてくなった。
「良くはない。でもな、ここで俺が押し返したら、ので攻められるのはえりさんだ。あのはもううちの父親が反対しているのに黙って結婚しようとしている。これ以あのでを悪くさせられない。」 「お兄ちゃんのは?」
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「俺のはな、もう22分ある。あのにはまだ何もない。」
それが兄の理屈だった。損は自分の側に寄せる。23ずっとそうだった。
「それに、おに迷惑をかけたくない。」 「私は関係ないでしょ。」 「関係あるだろう。おだけは呼ばれているんだ。おだけはあの席に座れる。」
そう言われると私は返す言葉を持たなかった。
名簿を作った夜のことを兄はで笑いながら話していた。招待状の線を3枚ダメにしたそうだ。が曲がる。字がきすぎる。順番が気に入らない。4枚目でようやく通した。
「席の順番まで考えたんだ。」 「へえ。」 「寺田は絶対にの方がいい。あいつ喋るから。おばさんはで通側。腰が悪いから。」
そこまで考えていただった。
その夜、私はえりさんに話をかけた。番号は7に交換していた。
「ミレイさん。」
声で分かった。このは話を待っていた。
「招待状を見ました。」 「はい。」 「えりさんが決めたんですか?」 「いいえ。」 「っていましたか?」
返事までに4秒あった。私は話をしながら壁を見る癖がある。
「はい。」 「いつから?」 「8の初めです。」 「止めなかったんですね。」 「止めました。」
えりさんの声が震えていた。
「止めました。父に言いました。琢磨さんの側にもがいるって。そうしたら父が……」 「なんて?」 「あの男の側にはがいない。そういうなんだって。」
私は受話器を持ったまま井を見た。
「えりさん、1つだけ約束してください。」 「はい。」 「あなたが謝る相は私じゃありません。」 「はい。」 「あののこと、兄に謝ってください。式のに1度でいいから。