"300億円が消えた結婚式" 第2話
その兄から話が来たのは、5の連休がけた夜だ。私はシンガポールの事務所で決算の資料を見ていた。
「俺、結婚することになった。」
声が照れていた。私は子からちがっていた。
「本当に? いつ?」 「相は園部えりさんというで38歳。2に登のサークルでりったのだという。向こうの族にはあんまり歓迎されてないみたいだけどな。」
兄は笑っていた。
「実がなんだ。央っていう。」
私はすぐに返事ができなかった。1秒? いや2秒。私はをけたまま止まっていた。央。うちのグループが最もきな額を預けているの名だ。
「お兄ちゃん、今、央って言った?」 「言った。偶然だよな。おに貸してくれたとこだ。向こうにったの?」 「言うわけないだろ。あれは終わった話だ。持ちしたら恩を着せることになれる。」
私が何も言わないでいると、兄が呼んだ。
「ミレイ?」 「なんでもない。」
言いかけた言葉を私はみ込んだ。言えば兄は必ず結婚をやめる。それだけではない。あのにうちのが置いてある理由をにすれば、このは度と私ので笑わなくなる。
「お兄ちゃん。」 「なんだ?」 「お兄ちゃんを選ばないの方が、見劣りするよ。」
兄は話の向こうで笑った。
「式は1018だ。帰ってこられるか?」 「帰る。仕事より先に予定を入れる。
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」 「げさだな。」
げさではなかった。私は話を切ってすぐ、そのの3を予定表から消した。役員会も張もかした。
その話から10ほど経った夜、兄がまた連絡をよした。今度は声がし疲れていた。
「えりさんのお母さんから話が来てさ。ご挨拶。まあ、そんなところだ。」
兄は笑ったが、は挨拶ではなかった。その部正子は受話器の向こうで30分く話を続けたのだという。
「ご実はどちらでしたかしら?」 「京の板です。」 「ご両親は何をなさっていた方?」 「父は運送の会社に勤めていました。母はジムです。」 「まあ、そう。それで失礼だけど、今の料はおいくら?」
兄は正直に答えた。620万円ですと。
「43でそれなの?」
そこで度がいたそうだ。
「うちの娘、これでものの子ですのよ。」
兄はそれを笑い話として話した。向こうにも向こうのがあるからな。お兄ちゃんるなよ。まだ会ってもいないんだから。
私は話を持ったまま窓のを見ていた。シンガポールの夜は湿っていて、のかりが滲んで見える。兄は昔からこうだった。自分が軽侮されていることに気づかないのではない。気づいたで、波をてない方を選ぶ。
「1つだけ聞いていい?」 「なんだ?」 「私のことは? 何て言ってるの?」 「妹が1いますって言った。それだけ。で美容関係の仕事をしていますって。
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」 「違ってはいない。」 「それでいいや。」
私はそう答えた。それでいいとっていた。その夜、私は自分が黙ったことをいく度かい返した。言わなかったのは兄のためだ。そうっていた。兄が結婚するのに私の会社のが300億円ある。それを兄に言わないという選択が、5ヶにどんな形で戻ってくるのか、その点の私はまだ考えてもいなかった。
顔わせは68と決まった。所はその部の自宅だという。私はその2に帰国の便を押さえていたが、ところから兄から話が入った。
「ミレイ、今回はいい。」 「どういうこと?」 「まずは親同士でって、向こうが言ってるんだ。」 「お兄ちゃんに親はいないでしょ。」
言ってから、私は自分の言い方を悔んだ。兄は拍置いてから、いつもの調子で答えた。
「だから俺1だ。妹さんはまたの会にって。」 「えりさんのお母さんが?」 「またの会。」
丁寧な言葉だった。丁寧な言葉ほど、をすに便利にできている。私は便をキャンセルした。仕事が詰まっていたのも本当だ。ただ、くと言い張らなかった理由の方は本当ではなかった。
その夜、兄から報告の話が来た。声はるかった。るすぎた。
「派なだったよ。から玄関まで10mぐらいある。」 「それでどうだったの?」 「うん。まあ話はした。」 「お兄ちゃん。」
私が黙っていると、兄は観したように話し始めた。
座敷に通されて、えりさんの父親の園部周さんが座っていた。66歳。央の会だと名刺をもらったそうだ。