"息子の婚約者の母は、20年前の女だった" 第12話
自分で決めた結婚。
そのすべてが、彼女の顔をるくしていた。
隣の健はし照れたように笑っている。
私は2を見ながら、20ののをいした。
まださかった健の。
濡れた。
どこへけばいいか分からなかった夜。
あのの私は、これから先に何が待っているのか何つ分からなかった。
ただ、この子だけは守ると決めた。
それだけだった。
昼はスーパー。
夜は清掃。
眠れないもあった。
おがりなくて、自分の事を減らしたもある。
学から集袋を渡された健が、「今じゃなくても丈夫だよ」と気を使ってくれたこともあった。
そのたびに私は悔しかった。
もっとしてあげたい。
の子と同じようにしてあげたい。
それでも健は度も私を責めなかった。
むしろ成するほど、私を助けるようになった。
そして医者になった。
今、するの隣にっている。
私は涙を拭った。
無駄な20ではなかった。
苗は式の最にを読んだ。
最初に誠へ向けて謝と、自分の気持ちを話した。
誠は何度も目元を押さえていた。
そして最、苗は私を見た。
「ゆみさん」
私は驚いて顔をげた。
「私が番苦しかった夜に、『必ず守る』と言ってくださったことを忘れません」
声が震えていた。
「私はずっと、母親というものが怖いとっていました。
広告
でも、ゆみさんを見て、母親って本当はこんなに温かいものなんだと初めてりました」
私はもう涙を止められなかった。
「私もいつか、ゆみさんのようにくて優しい母親になりたいです。これからも私たちを見守っていてください」
血のつながりはない。
それでも、その瞬、私は苗を本当の娘のようにじた。
式から1か。
私は自宅の台所で夕を作っていた。
包丁がまな板へ当たる音。
鍋からがる湯気。
さな居。
20からきく変わらない暮らし。
けれど、のはまるで違った。
私は仏壇へ線をあげた。
「お父さん、健は派な庭を作りましたよ」
父の写真はいつものように静かに笑っている。
「私も、とうとうお姑さんです」
自分で言って、し笑った。
その、玄関のチャイムが鳴った。
「お母さん、こんばんは!」
苗のるい声。
「遅くなってごめん。病院が引いた」
健も緒だった。
玄関をけると、苗がきな買い物袋を持ちげて見せた。
「今はお鍋にしようとって、野菜をたくさん買ってきました」
「そんなに買ったの?」
「私が全部作りますから、お母さんは座っていてください」
苗は笑いながらエプロンをつけ、台所へ入っていった。
健が声で言った。
「最、苗、お母さんの料理をすごく真似してるよ」
「あら」
「レシピをノートにいてる」
広告
私は笑った。
「じゃあ、お醤油を入れすぎないように見ておかないとね」
健と顔を見わせ、声をげて笑った。
台所から苗の声がする。
「お母さん、お玉ってどこでしたっけ?」
「から2番目の引きしよ」
私は答えながら台所へ向かった。
温かな照。
野菜を切る音。
汁のり。
誰かが帰ってくる。
誰かと緒にべる夕。
20の私が、喉からがるほど欲しかった常だった。
昔、弁護士は私に言った。
誰にも恥じないをきることが番切だと。
あの頃の私は、それを「復讐」のように受け取っていた。
いつか幸せになって、私たちを捨てたを見返したい。
そんな気持ちもあった。
でも今は、もう誰かを見返したいとはわない。
恵子がどこで何をしているのか。
元夫がどんな活を送っているのか。
る必もない。
私には、今ここにあるものだけで分だった。
私は自分のを見た。
節の太い。
洗剤で荒れた跡が残る。
昔より皺も増えた。
けれど、こので健を育てた。
苗の涙を拭いた。
そして今、この温かな卓を支えている。
「お母さん、見お願いします」
苗が皿を差しした。
む。
「しだけいかな」
「やっぱり? 健が濃いは駄目ってうるさいんです」
「患者さんには減塩って言ってるからね」
健が笑う。
「でも同じこと言わなくていいの」
3でまた笑った。
は々、理尽な来事でを壊されたようにじる。
私もそうだった。
の夜、を追いされた、本当に全てを失ったとった。
でも失ったものだけを見続けていたら、きっと今の私はいなかった。
さな健のを握り、翌朝も起きた。
仕事へった。
ご飯を作った。
また次のもきた。
その繰り返しの先に、今の私がいる。
私は台所につ健と苗を見た。
あのの私へ、もし言葉を届けられるなら、1つだけ伝えたい。
丈夫。
あなたが今握っているそのさなは、いつかあなたよりきくなる。
そして今度は、そのがあなたを守ってくれる。
泣いてもいい。
悔しくてもいい。
でも、きることだけは諦めないで。
あなたが歩くいの先には、こんなにも温かな卓が待っているのだから。
「お母さん、ご飯できましたよ」
苗が振り返った。
「今くわ」
私は笑って答えた。
そして、2が待つ卓へ歩いていった。