"息子の婚約者の母は、20年前の女だった" 第5話
い沈黙の、健が言った。
りより先に、しそうな顔をしていた。
「ごめんなさい。もっとく話すべきだったわ」
私が俯くと、健は私のを握った。
「謝らないでよ。お母さんが僕を守ってくれたから、今の僕がいる」
その言で、涙がこぼれた。
けれど今は、泣いているではない。
「苗さんから昨夜話があったの」
私は、彼女が婚約をやめようとしていたことも話した。
健の表が痛みに歪んだ。
「苗が……」
「あなたを守るためよ」
健はすぐに首を横に振った。
「絶対に別れない。苗も僕が守る」
その、健のスマートフォンが振した。
画面を見た瞬、彼の顔が変わる。
「どうしたの?」
私も覗き込んだ。
そこには見らぬ融会社からの通が表示されていた。
《審査が完しました。指定座への500万円の融資続きをめます》
私たちは瞬、言葉を失った。
恵子の計画は、すでにき始めていた。
健はすぐにへ連絡した。
「本です。実印が盗難に遭った能性があります。座からの審なと送を止してください」
病院で緊急の判断を繰り返しているからだろう。
声は驚くほど落ち着いていた。
担当者との確認が終わり、健はく息を吐いた。
「にった。続き途で止められたみたいだ」
私は子の背にを置いた。
500万円。
もしそのままいていたら、何が起きていたか分からない。
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しかしするもなく、玄関のインターホンが鳴った。
モニターを見る。
恵子と苗だった。
朝8過ぎ。
あまりにもい訪問だった。
「僕がる」
健がちがった。
私は彼の腕を掴んだ。
「待って」
「でも」
「今問い詰めれば、全部隠すわ」
まだ決定な証拠を集める必がある。
私は玄関をけた。
「あら、朝くからごめんなさいね」
恵子は悪びれもせず笑っていた。
「くまで来たものだから、ご挨拶だけでもとって」
そのろで、苗がさくをげた。
目が赤い。
昨夜ほとんど眠っていないのだろう。
居へ通された恵子は、部のを見回した。
古い壁。
さなテレビ。
必最限の具。
彼女の角がわずかにがった。
「ずいぶんこぢんまりとしたおなのね。男の子を1で育てるのは、さぞ変だったでしょう」
私はお茶を用しながら聞き流した。
だが恵子はさらに続けた。
「健さんは派なお医者様になられたけれど、やはり父親がいないというのは形成に響するでしょうね」
私はを止めた。
「これからは、うちの誠が父親代わりになってあげられますわ。りなかったものを補うのもしい族の役目ですもの」
20、私たちを追いした本が、今になって「普通の庭」を語っている。
胸の奥でりが広がった。
その、私のろから健の声がした。
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「お気遣いありがとうございます、恵子さん」
健は静かに私の横へった。
「ただ、僕の形成は母のだけで分でした。欠けているものは何もありません」
恵子の笑顔が引きつった。
苗が顔をげ、健を見た。
健はさらに穏やかな調で続けた。
「そういえば最、内に印鑑や類を盗まれて、勝に借を作られそうになった患者さんの話を聞きました。本当に怖いですよね」
何気ない世話のような言葉だった。
しかし恵子のがきく震えた。
膝のに置いていたブランドバッグがへ落ちる。
「あら、やだ。が滑っただけよ」
彼女は慌てて拾った。
額にはうっすら汗が滲んでいた。
「本当に物騒な世のですわね。私たちには関係ない話ですけれど」
そして突然ちがった。
「苗、帰るわよ」
苗の腕を掴み、逃げるように玄関へ向かった。
私は何も言わず2を見送った。
ドアが閉まった、く息を吐く。
そのだった。
にさなが落ちているのに気づいた。
恵子がバッグを落としたにたものだ。
私は拾いげた。
消費者融のATM利用細だった。
そこにかれていた名義を見て、背筋がえた。
恵子個の名ではない。
誠が勤める会社名だった。
借は、彼女個だけの問題ではなかった。
恵子は夫の会社まで巻き込み始めていた。
そしてそのの午、興信所から追加報告が届いた。
《恵子氏は現、夫・誠氏の会社名義を使い、たな融資を受けようとしている能性があります。