"息子の婚約者の母は、20年前の女だった" 第3話
「お母さんみたいに、苦しくてもしてるを助けられる仕事がしたいから」
その夜、私は蛇のを流したまま、声を殺して泣いた。
しかったのではない。
自分の20が、しだけ報われた気がしたからだった。
健はその、必に勉した。
奨学も利用しながら医学部へみ、今、願だった総病院で働き始めた。
私は自分のを見た。
節が太く、指先にはいところがある。
向かいに座る恵子のく入れされたとは、まるで違う。
けれど私は、このを恥ずかしいとったことはない。
こので健を育てた。
こので何度も弁当を作り、をした息子の額をやし、受験のには背を押した。
私にとっては勲章だった。
「ゆみさん、お料理、おにいませんでした?」
突然、恵子が私に声をかけた。
その目には、化粧での約束を私が守るか試すようながあった。
「いいえ。とても美しくいただいています」
私は穏やかに答え、お茶をんだ。
私が平静でいることが気に入らないのか、恵子の元がわずかに歪んだ。
その、苗の父・誠が何気なく話し始めた。
「そういえば健君の病院、妻がよくくサロンのくなんですよ」
恵子の肩がねた。
「え、ええ。まあ、そうね」
誠は気づいていなかった。
だが私は気づいた。
興信所の報告によれば、恵子が「サロン」
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と説している所は、美容関係のではなかった。
病院のくにある雑居ビル。
そこに、彼女が接触している投資関連会社が入っていた。
恵子は夫にまで嘘をついている。
「健さん」
恵子が取り繕うように笑った。
「結婚したら、苗だけでなく私たち族のこともよろしくお願いしますね。お医者様なら本当に頼りになりますもの」
私はその言葉の奥にあるものをじた。
苗がさらに俯く。
この娘は何かっているのかもしれない。
なくとも、母親の異常な銭覚には気づいているのではないか。
私は静かにをいた。
「族になるなら、助けうのは切ですね」
恵子が嬉しそうに頷く。
私は続けた。
「その代わり、隠し事はせず、何でも話しえる族になれたらいいですね」
瞬だけ、恵子の顔から表が消えた。
事会が終わり、料亭の玄関へると、ではまだがっていた。
誠が呼んだタクシーへ乗り込む直、恵子は度だけこちらを振り返った。
先ほどまでの余裕は消えていた。
私はハンドバッグのの茶い封筒のみをじながら、静かにその背を見送った。
その夜、私のもとへ1本の話がかかってきた。
相は、苗だった。
夜10を過ぎていた。
私は自宅へ戻ると、居の隅にあるさな仏壇へ線をあげた。
そこには、数にくなった私の父の写真がある。
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健の顔わせが無事に終わったことを報告しようとしていた、スマートフォンが鳴った。
画面には「苗さん」と表示されていた。
こんなに、しかも顔わせの当に連絡してくる。
胸騒ぎがした。
「もしもし、苗さん?」
『ゆみさん……夜遅くに、本当に申し訳ありません』
声が震えていた。
背景からの音が聞こえる。
「にいるの?」
私が尋ねると、しばらく沈黙が続いた。
そして苗は、消え入りそうな声で言った。
『健さんとの結婚、なかったことにしていただけませんか』
私は息を止めた。
あれほど2はしっていた。
苗が自分からそんなことを言うには、理由がある。
私は急かさなかった。
『母が……健さんを騙そうとしているんです』
苗は泣きながら話し始めた。
料亭からの帰り、誠がので眠ってしまった、恵子は部座席で苗の元へ顔を寄せたという。
「ゆみって女、昔から何も変わってないわね」
そして笑いながら続けた。
「でも息子は医者なんでしょう。あれならおはいくらでも引きせそうね」
私は目を閉じた。
やはり、恵子は健を銭目で見ていた。
『私、ずっと母が怖かったんです』
苗の声はさらにさくなった。
誠は仕事が忙しく、庭のことはほとんど恵子に任せていた。
そので、苗の学先も、装も、友関係も、恵子が決めてきたという。
「あなたのため」
「恥をかかないため」
「うちのにふさわしくするため」